逸品館メルマガ バックナンバー 240

1年前に中古で購入したBMW 135i(MT)にはなぜか、車よりもずっと古い製造年のタイヤが付いていて(前オーナーがタイヤを替えて乗っていて、売るときにタイヤを古いノーマル品に戻したのでしょう)表面のゴムは堅くなってひび割れしているし、溝も減っていました。標準装着のタイヤが特殊なサイズで交換には20万円を大きく超える費用がかかることがわかったので、そのまま我慢して1年(1.2万キロ)乗っていました。その間「特別危ない」と思ったことはありませんでした。しかし、先月、ぼろぼろになっていたBMWのタイヤを新調した(Bridgestone S-001)ことで、そのタイヤがどれくらい痛んでいたかよくわかりました。

以前のタイヤではカーブでハンドルを切っても前のタイヤが滑って曲がらず、きちんとブレーキを踏まないとBMWは曲がらないのだと思っていました。加速に際してもサードギヤですら頻繁に空転防止のトラクションコントロールが働き、それはエンジンにパワーがある証拠だと思っていました。しかし、交換後の新しいタイヤではハンドルを切った方向に車は曲がるし、セカンドのフル加速でもタイヤは空転しないし・・・。これほどまでにタイヤの違いを感じたのは初めてです(それだけ、前のタイヤが痛んでいたんです・・・)。

多くの車は前か後のどちらかに重さが偏っているのですが、BMWの車は前後のタイヤに同じ重さがかかるように、50:50の重量配分にこだわって作られています。随分と数字にこだわった面倒な設計をするものだと思っていたのですが、タイヤが痛んでいたにも関わらず「危険」を感じなかったのは、どうやらその50:50の効果のようです。


タイヤが滑る速度でも重量配分が50:50だと、前後に同じ重さ(慣性力)がかかるため、極端に前が滑る(アンダーステア)あるいは後が滑る(オーバーステア)ことがありません。タイヤに頼らない基本的なバランスに優れていたからこそ、それが絶大なる安心感に繋がっていたことがわかりました。現在の技術を持ってすれば、これほどまでに重量配分にこだわらなくても「危ない車」にはなりません。しかし、BMW社は限界が近づいたとき、限界を超えたときのことまで考えて、重量配分の適正さを厳守していたのです。痛んだタイヤを使っていたことで、それをきわめて明確に感じ取れました。自分が所有するBMWが飛び抜けて素晴らしいというつもりはありませんが、こういう見えない部分へのこだわりを貫いている物作りは、日本製品よりも海外製品が進んでいるのかも知れません。

先週Luxman DA200とM200を組み合わせて音質テストを行いました。通常、機器間の接続はXLRよりもRCAが高音質なことが多いのですが、DA200とM200ではXLR接続が圧倒的に高音質でした。さらにPCとDA200をUSBで接続し、同一の音源データーを内蔵HDD、高速USBメモリー、USB接続外付けHDDから再生して音質比較実験を行いました。


外付けHDDのUSB接続ケーブルを変えることで音質が大きく変わるのは、従来の経験から予想できたことでした。しかし、同じUSBメモリーをPCにUSB2.0で接続するよりもUSB3.0で接続したときの方が、圧倒的に音が良かったのは想像外でした。このテストレポートは、You Tubeで音質比較を確認して頂けます。文字だけでは伝わらない「音質」を実際にお試し(追試)頂けるのは、素晴らしい技術の進歩だと思います。

30年前にCDが登場してから、デジタルオーディオには多くの迷信が存在します。最大の迷信は「デジタルデータが変わらないならば、再生される音は変わらない=デジタルケーブルでは音が変わらない」だと思います。今回のテストでもデジタルデーターの完璧性と音質には、密接な関係がないことが伺えます。オーディオ機器ではデジタル回路よりもアナログ回路がより重要です。電源や増幅回路、ケーブルや一つずつのパーツに至るまで、そのすべてが音質に大きく影響を耐えています。また経験上、小さいパーツよりも大きなパーツほど音質への影響が大きいように思いますが、それは振動と関係しているのかも知れません。オーディオで得られた経験や考え方は、映像の高画質化にも共通します。

デジタルに比べるとアナログ回路は定量的に解説することが難しく、非常にデリケートなためその性能を数値化することもできません。だからといって、定量的に解説しやすいデジタル部分だけで音質や画質を考えるのは、正しくありません。BMWの前後重量配分のように、偏らないバランスが重要です。

 

P.S.
3月3日に開催しました、TAD Reference Systemの試聴会の様子を録画でご覧頂けますが、なぜか1回目と3回目では音の出方が全く違います。特に何かをしたわけではありません。エージング(馴染み)だけで、これほど音質が変わるのも珍しいケースだと思います。よろしければご確認ください。

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