絶対的な音質では、高音の分解能、超高次倍音の伸びやかさでLittle Cosmos3が明らかにPD-H600+AG-H600とSinging Box2を上回る。特にアコースティックな音源の再現性ではその2機種を圧倒し、断トツに「音が良い」のは疑いがない。しかし、それがすなわち音楽の表現力の差になるか?と言えば、そういいきれないのがオーディオの面白く、また難しいところではないだろうか?
Little Cosmos3の良さは、中高域の圧倒的にデリケートな表現に集約される。まるで高級コンポーネントと聞き違えるほど、繊細でクリアな中高域は、アコースティック楽器やボーカルを至近距離で聞いているように生々しく再現する。
特に交響曲のような複雑な音源の再現は、この価格帯のどんな製品と比べても圧倒的に優れているから、楽器が多く使われる高度な音楽や楽器の音の純度を求めるなら、Little Cosmos3以外の選択はない。
録音の悪いソフトでも楽しく聞かせるのは、AIRBOWすべてに与えられた特徴だが、録音が良いソフトとPMCのように優れたモニタースピーカーとの組合せが、Little
Cosmos3の能力をさらに大きく引き出すことが今回のテストで確認できた。
価格の限界でAIRBOWの高級機と比較すると、音の密度がやや足りずに音が薄く感じることがあるかも知れない。そんな時は、電源タップやケーブルやボード、あるいはRCAインターコネクトケーブルで積極的な音作りをすると良いだろう。
インシュレーターを奢ってやるもの良いと思う。CDプレーヤーとアンプが分かれているのは、チューニングの自由度を考えるとありがたい。いろんな工夫ができるからだ。しかし、調子に乗って高価なアクセサリーを多用すると、もう一台Little Cosmos3が買えてしまうから、やり過ぎには注意が必要だ。
Singing
Box2の良さは、中低音のしっかりした感じとアタックの再現性の確かさにある。
高級機で設計を欲張り、回路を下手に複雑にすると音は細かくなるが元気がなくなる。これは国産の高級コンポにありがちな問題点でその結果、音楽表現を矮小化しかねない。お金をかけて音が良くなったはずなのに「音楽を楽しめなくなった」という原因は、ほぼこの問題に直面したからに違いない。
Singing Box2は、音の細やかさではそういう高級機に劣るが、逆に「音楽を楽しく表現する」、「音楽を得エネルギッシュに再現する」という部分には太鼓判を押せる。そのエネルギー感と瞬発力は、かなり高額なコンポと比べても全く遜色はない。
疑問があるとすれば、音がやや「安っぽい」ことであるが、それは10万円を切るという価格を考えれば納得せざるを得ない、ほんの僅かな問題点だ。だいたい「音が安っぽい」ということがどれだけ音楽を楽しむためにマイナスになるのだろう?それならラジオでは音楽が楽しめないことになるし、音が良ければすなわち音楽が楽しめるという音にもなる。これは、オーディオに興味を持ち始めた人達が直面する「最大の矛盾」ではないだろうか?少なくともSinging
Box2の音質が、多少「安っぽかった」としても、私は音楽を楽しむ上でそれを全く問題としなかった。
しかし、この「音質か?」それとも「音楽性か?」そのどちらを優先するかという問題については「オーディオの永遠のテーマ」であると同時に、リスナーの気分や個人差による好みで非常に大きく左右される。だからオーディオの購入には、絶対に「事前試聴」が欠かせない。その良さや、自分が好むかどうかはそれを「その人自身」が聞かなければ判断できないからだ。そんな時間はないし、これくらいの価格なら買って試した早い、とお考えの方には、癖のない音楽の表現力よりも、「ハッとするような音の美しさ」を求められるなら、Little Cosmos3を選ばれると良いと思う。
AIRBOWの2機種に共通するのは「音が自然」だと言うことだ。私自身が音を決めたからかも知れないが、AIRBOWのサウンドは違和感がなく体にすっと入ってくる。聞き疲れることもなく、聞き飽きることもない。音が違うのに「どちらも自然」というのはおかしいじゃないか?そう感じる方もいらっしゃるだろう。言い換えるなら、出てくる音がSinging
Box2の方が「音源の近くで聞く生の音に近い感じ(少なくとも私には)」であり、Little
Cosmos3の方が「コンサート会場で聞く音楽に近い感じ」がするのである。感じられる違いは「音源からの距離」であり、どちらも「自然な音」であることに変わりはない。
今回テストした3機種は何れもスピーカーを繋ぐだけで、誰にでも良い音が出せるが、その中でも一体型のSinging Box2は、ワンボディーなので接続は電源ケーブルとスピーカーケーブルを繋ぐだけという簡便さが魅力だ。確かにLittle Cosmos3が持つチューニングの楽しみは小さくなるが、ビギナーがお使いになる、あるいはセカンドシステムとしてお使いいただくには、その簡便さが長所となる。
USBメモリーを直接繋いで音を出せるのも素晴らしいし、音も抜群に良い。FM/AMも聞けるし、i-podなどの携帯プレーヤーをアナログで繋ぐためのミニステレオジャックの外部入力もフロントパネルに備わっている。多機能で、価格は3機種中最も安く10万円を切る。外観は質感高く、価格にふさわしい高級感が感じられる。文句なしにお薦めできる。
今回のテストでは、電源ケーブルにAIRBOW
KDK-OFC/M1.85を使用し、テスト終了後に付属品にに変更してクラシックを聴き直したが、レンジがやや狭くなり音が固まってしまった。付属電源ケーブルの音も悪くないが、別売オプションのKDK-OFC/M1.85を聞いてしまうと付属品ではやや物足りない感じを覚えた。音質を少しでも!とお考えなら購入時にKDK-OFC/M1.85を一緒に購入すると良いだろう。
PD-H600+AG-H600の良さは、中音重視のバランスにある。高音を無闇に欲張らず、耳当たりの良い帯域とまろやかで出しゃばり過ぎない豊かな低音から構成される音は、ソフトや音楽の種類を選ばず納得のサウンドを醸し出してくれる。音楽性に富むとはいえない国産コンポ、特にミニコンポの中にあってその音は出色の出来映えだ。
確かに値段は少々高いかもしれない。しかし、肉厚のアルミの筐体は価格にふさわしい高級感を持っているし、スイッチ一つにしてもピュアコンポと同等の高級感が感じられる。さすがにEsotericを傘下に持つTeacならではの仕上がりだ。
黒というカラーも好みが分かれる所だと思うが、大人の質感にふさわしい仕上がりは、自信を持ってお薦めできる水準だ。フォノイコライザーを内蔵しレコードプレーヤーが繋げるのもポイントになるだろう。さらには、i-podを簡単に設置し、充電も出来る「i-podドッキングステーション」も標準で付属する。まさに至れり尽くせりである。
今回のテストでは、電源ケーブルにAIRBOW
KDK-OFC/2.0を使用したが、テスト終了後に電源ケーブルを付属品に変えて比較すると、低音も高音も伸びなくなり、音場もかなり混濁してしまった。KDK-OFC/2.0による音質改善が\4,900/1本なら、このクラスのコンポーネントのグレードアップには適切だと思う。
また、同梱されているRCAケーブルも最廉価の「接続テスト用」程度のものでしかない。わざわざ音にこだわってこのクラスのミニコンポをお考えになるなら、少なくともKDK-OFC/2.0とAudio
questのALFA-SNAKE以上のRCAケーブルはお薦めしたい。合計1万円強のアクセサリーへの投資で、所有するすべてのディスクが「より良い音」で聞けるとすれば、その投資効果は決して小さくないと考えられる。