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Pioneer NA70A USB-DAC marantz AIRBOW HD-DAC1 Special 音質 比較 試聴 評価 評判 レビュー 価格 販売 marantz AIRBOW PM7005 Applause Audiopro FS20 音質 比較 試聴 評価 価格 販売 展示N70A ネットワークプレーヤーHD-DAC1 Special 、 PM7005 Applause 音質比較テスト
Pioneer(パイオニア)から発売されたUSB-DAC機能を搭載する、ネットワークプレーヤー"N70A"を前回は、USBメモリー再生とLAN接続で比較しました。今回はそれをUSB接続して、同様のUSB-DAC入力を装備する AIRBOW PM7005 Applause、USB-DAC機能を搭載するヘッドホンアンプ AIRBOW HD-DAC1 Specialの2機種と比較しました。また、前回の比較試聴では、音質より詳細に聞き比べるためアンプとスピーカーに高価なTADハイエンドシステムを使用しましたが、今回はより一般的な音質で比較するため、スピーカーに限定発売のaudiopro FS20(ピアノブラック仕上げ、上写真左、ペア14万円/税別)を選び、アンプにはAIRBOW PM7005 Applause(USB入力装備、売価17万円/税込)をチョイスしました。また、USB入力を備えるPM7005 Applauseを選んだのは、再生機器のグレードをN70Aに合わせるためだけではなく、PM7005 Applauseの内蔵DACの音質と、N70Aを外付けDACとして使った場合の音質を比較する目的があります。もし、内蔵DACの方が良ければ、音質改善のためにN70Aを購入する必要がありません。それを探ろうと考えました。さらに、N70AのUSB-DACとしての音質を純粋に探るため、音質をよく知るAIRBOW HD-DAC1 Specialを比較対象に選びました。 接続する再生用PCは、MAC Book。使用する再生ソフトには、Audirvana Plusを選びました。再生にMacを使ったのは、Windows PCに比べて音質がよいことと、接続が簡単なこと、加えてPCのプラットフォームによる音質差が小さいことなどが理由です。再生ソフトにAudirvana Plusを選んだのは、一般的に広く使われていること、接続などの操作が簡単だからです。 私もPC・ネットワークプレーヤーの試聴を始めた頃は、Macの操作を覚えるのが面倒でWindowsを使っていたのですが、最近増えてきたハイレゾやDSDファイルの再生では、音質の良さと再生の安定度(テスト時の機器切替が簡単で安全)でMacがWindowsよりも圧倒的に優れているため、最近はもっぱらMacを使っています。 ソフト面では対応のWindowsとMacですが、事音と映像に関しては、古くから「現場ではMac」が使われて来たためインターフェイス・ソフト共にMacがWindowsよりも進歩しています。逸品館の動画もMacで配信していますが、Windowsと比べ操作性、音質面でWindowsよりも優位です。PC・ネットワークオーディオをより本格的に取り組みたいとお考えなら、手元に一台Mac(Mac BookやMac AirでOK)を用意しておくと、何かと便利だと思います。 audiopro FS20(ピアノブラック仕上げ) (お問い合わせ・ご注文はこちらから) AIRBOW PM7005 Applause (お問い合わせ・ご注文はこちらから) Mac Book PRO(core2 DUO 搭載HDDモデル) OS:MAC-OS X(Yosemite) 再生ソフト:Audirvana Plus 各USB-DACとMac Bookは"AIRBOW ウェルフロートボード"(上写真右)に設置し、接続には、電源ケーブル:"AIRBOW KDK-OFC"(下写真左)、USBケーブル:"Wireworld Violet USB2.0"(下写真右)を使いました。 テスト概要のご紹介動画 試聴ソフト CDリップWAV(44.1kHz/16bit)に加え、ハイレゾ(88.2kHz/24bit)とDSD(2.8MHz)を試聴 今回の試聴には、いつも使う5曲に、E.ONKYOサイトから発売されている「What a Wonderful World / Mathias Landaeus Trio / MA Recording」のDSD2.8MHz、WAV 88.2kHz/24bitの2曲(2ファイル)を加えた7曲を聞きました。 音質テスト
試聴後感想 最近声高にハイレゾ・DSDの「高音質」が謳われています。けれど、実際に自分自身で録音テストを行ってみれば、DSDの良さを出すためには、レコーディングそのものからDSDで行う必要があることがわかります。けれど販売されているDSDは、録音のほぼ100%がPCM(ハイレゾ)で行われてから、編集完了後にPCMをDSDに変換されて売られています。これは、DSDというフォーマットが編集に対応していないので、ミキシングに支障をきたすからですが、今後も編集できないDSDダイレクト録音ソースが主流になることはありません。 DSDについて、もうすこし詳しく説明しましょう。 DSDという方法は、アナログ録音に変わる、最も音が近い方法として開発されました。しかし、前述したように編集ができない(やりにくい)という重大な問題があったために、デジタルフォーマットの主流にはなり得ませんでした。現在疲れているデジタルのフォーマットは、編集が簡便に行えるPCMですが、その音質がDSDにくらべて劣る訳ではありません。あえて違いを挙げるならば、DSDが持っている「アナログのような滑らかさ」がPCMには欠けていますが、逆にPCMには、DSDに欠けている「メリハリの強さ」があります。だから、現在主流となっている音楽のPOPS、JAZZ、ROCKには、PCMが向いていると言えます。 DSDが得意とするのは、弱音部の表現が繊細なClassicです。また、バラード系ボーカルのようなスローな音楽にも向いています。DSDが生きてくるのは「アナログマスタ−」音源をデジタル化するときです。これは、DSDの音がアナログに近いことが大きく影響しています。アナログソース+DSDダイレクトリマスタリングのソフトであれば、DSDの良さが発揮されるでしょう。しかし、アナログマスター音源を再生する時の「機器(再生オーディオ機器)」に高音質なものが使われていなければ、それがネックとなってDSDでも良好な音質は期待できません。さらに、録音時の「ノイズ」を消すために、ノイズゲートなどのデジタル処理が下手に行なわれていた場合、DSDリマスタリングソフトでもCDより音が悪い場合がありますから、注意が必要です。 結果として、再生品質のほとんどは「収録するデジタルフォーマットの種類」ではなく、リマスタリング機材の音質やレコーディングエンジニアの腕にかかっています。完全なものがほとんどない市販のソフトを聞いて、それがDSDかPCMかを言い当てるのは、たぶん不可能でしょう。「出来上がったソフト」という結果から見れば、両者の違いはそれほど大きくないのです。 次に、CDとハイレゾ、DSDの音質の違いについて説明します。 先ほど「入れ物となるデジタルフォーマット」よりも「それに入れる音」が重要だと説明しました。仮にデジタルフォーマットを「お皿」だとすると、収録する音は「それに載せる食材」です。お皿がいくら立派でも、食材がしょぼいと、料理は美味しくいただけません。まず、それを頭に置いてください。また、「お皿」については、各メーカーや雑誌、評論家などが耳が、説明を繰り返していますから、ここでは詳しい説明を省きます。 では肝心な「食材」についてはどうでしょうか?ほとんどの配信サイトが、それについての情報を提供していません。私が求めたいのは「どんなマイク」と「どんな録音-編集機材」を使っていたか、そして「録音時のフォーマット」が重要です。 録音時に求められる「周波数特性」ですが、「パワードスピーカー Tannoy Reveal 402 音質比較」で」詳しく書いたように、良い音を録音しようとするときに使えるマイクの周波数特性の上限は20kHzを大きく超えることがありません。PCMでサンプリング周波数を変えて実際に試してみるとよくわかりますが、44.1kHzと48kHzの違いは、数字以上に大きく、聴感上では「1オクターブ」程度高域に差があるように聞こえます。48kHzと96kHzの違いはそれよりもずっと少なく、無視できる程度でしかありません。96kHzと192kHzでは、機材によっては96kHzが明らかに良い音で聞こえます。 次に量子化ビット数を変えて試すと、16bitと20bitの違いはかなり大きく、20bitと24bitでもやはり少し違います。32bitは試したことがないので分かりませんが、20bitでも音質的には十分です。32bitだと編集時のデーター量が大きくなって不便ですから、中を取って24bitが妥当な選択です。実際に多くのレコーディングエンジニアは経験上、もっぱらPCM 48kHz/24bi、もしくは96kHz/24bitを使っています。NHKはトラック数を確保するため、交響曲の収録では、48kHz/24bitを使い、そのソースをブルーレイにするときには、それをレコーディングコンソールで96kHz/24bitにアップサンプリングしています。 これが、録音の現実です。つまり「最高の食材」は、「96kHz/24bit」の「お皿」に乗るだけの量でしかないのです。 つまり、現在販売されている「ハイレゾ」ソースの中で「デジタル録音されたもの」に使われる食材は96kHz/24bit以上の「お皿」は不必要なのです。また、CDをそのままリマスタリングしている「ハイレゾ」には、CDのデーターをアップサンプリングしただけのものすら存在します。しかし、これでは家庭用のPCでアップサンプリング、DSD変換を行った場合と、配信されるハイレゾ音源の音質にほとんど違いが出ません。けれど大手配信サイトからこのような「インチキ音源」が、堂々と「リマスタリング」と称されて、高額に売られています。 アップサンプリングで作られたハイレゾソフトは「波形分析ソフト」でエネルギー分布を見れば、20kHz以上に「倍音構造を持たない」ことですぐに「それ」と判別可能です。いくつか調べてみましたが、想像通りの結果にがっかりしました。私から見れば、これは詐欺、もしくは詐称で、道義上やってはならないことです。皆様も疑問があれば、市販の(あるいはフリーの)波形分析ソフトでお手持ちのデーターを調べれば、結果は判別できるでしょう。 しかし、反論もあるでしょう。ハイレゾの96kHzと192kHzでは「明らかに後者の音が良い」、あるいはDSDは「2.8→5.6→11.2」と「周波数を上げればどんどん音が良くなる」という現実です。しかし、果たしてそれは「フォーマット」という「お皿」が良くなったからでしょうか?DAコンバーターに搭載されているDACチップは、入力されたデジタルデーターをそのままアナログに変換していません。それは、トランジスターを高速で動かしてDA変換を行った場合、速度が速くなりすぎたり、変換回数(スイッチング回数)が多くなりすぎると、トランジスターの速度が追いつかず、歪みが大きくなるからです。これを解決する方法として、DACチップには「デジタルフィルター」という「論理回路」が搭載されています。入力されたデジタルデーターは、まずDACチップの「論理回路」に入ります。そして、「搭載するトランジスタ−(DA変換回路)」に最適な「動作パターン」に変換されているのです。入力されるデジタルデーターが変われば、当然論理回路の動きも変わります。結果として、変換後出力される音も変わります。音が変わるのは、フォーマットが上位になったからではなく、単純にDACの動作原理が変わったからかも知れません。現実にEsotericは、この論理回路の設定の一部をユーザーに開放し、それを「音作り」として生かしています。逆にTADはその動作ポイントを88.2kHz/24bitに固定することで、音の変化を抑制する方法を選んでいます。 オーディオ業界は「高価なものをより珍重する」というユーザー意識(ユーザー需要)を利用して、中身のない(良いパーツ屋新技術が使われていても、音が良くない)機器や中身のないソフト(先に説明したようなフォーマット/入れ物だけが大きくて、中身/音が入っていないソフト)を平気で販売してきました。もしかすると、作る方(レコーディングエンジニア)も売っている方(レーベル)も「音の善し悪し」がわからないのかも知れません。最近では「おまけ」でCDを売っている有様です。もちろん、既存の業者を食わせて行くための苦肉の策なのでしょうが、とにかく、うたい文句ばかりで中身の伴わない「偽物」の多さには閉口します。そして、良くない物を「良い」と断言する、メディアや評論家にもうんざりです。けれど、消費者は賢く、その結果「高音質オーディオ市場」は衰退の一歩をたどって来ました。今時「音が良い」と言っても、多くの消費者は財布の紐を緩めないのが現実です。 けれど、本物の「良い音」は、代価を支払って手に入れる価値があります。良い音と、良い音楽が、日常をより良く変えてくれる力を持つことを考えれば、それらには価格以上の価値があるはずです。 くどいようですが、再現性がないから、絶対的な指標がないから、消費者を欺けるというのは、間違っています。悪い装置、悪い音を聞いたから人が「不幸になる」ことは、たぶんありません。けれど、良い装置で良い音を聞いたら、ほとんどの人は「幸せ」を感じるでしょう。人の一生を「幸せ」にする力を持っているオーディオ機器だからこそ、作り手・メディアは、その善し悪しを「知らなかった」ではいけません。オーディオ業界は総力を挙げて良い音を適価で販売する社会的な責務がある、と考えるのは決して無茶な独りよがりではないと思うのです。 話を戻します。 今回のテストでは、私の予想(先入観)が「大きく裏切られ」ました。 AIRBOW PM7005 ApplauseにN70Aを追加した場合、それぞれの長所が引き出されるのではなく、お互いの長所を削りあう結果になると予想しましたが、それは見事に覆され、見事な「Win-Win」の関係が実現しました。 また、AIRBOW HD-DAC1 Specialを追加した場合、同じ方向で音質がどれくらい改善するか、自分自身が手がけた機器だけに、容易に想像できると考えていたのですが、予想していたよりも、遙かに大きな改善が実現しました。入力機器の追加だけで「中低音の厚みの改善」と「エネルギー感」がこれほど向上するのは、想像の範囲を大きく超えています。 どれだけ情報を集めても、結局はやってみなければわからない。それがオーディオの難しさだし、逆に面白さです。一筋縄でいかないから、オーディオはこれほど奥が深く、興味が尽きないのでしょう。そしてどうせなら、費やしたコストは音質に反映させたいものです。 2015年6月 逸品館代表 清原裕介
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