試聴には、DVDプレーヤー AIRBOW
DV60/Ultimate 、 AVプリアンプ AIRBOW
AV8003/Special 、 AVパワーアンプ AIRBOW MM8003/Specialを使い、プレーヤーとアンプの接続は同軸デジタル入力で行った。
スピーカーケーブルには、AIRBOW HCR-ACF/EVO/EZを使っている。
AIRBOW DV60/Ultimate
AIRBOW AV8003/Special
AIRBOW MM8003/Special
ソフトには、女性ジャズボーカルから「ナタリー・コール ラブソング」、シネマ・サウンドトラックから「タイタニック」を選び、新製品のMonitorから試聴を開始した。
Natalie
Cole “Love Songs” AMCY-6245
Monitor
高域が繊細で明瞭感が高く、恐ろしく切れ味がよいが金属的な音ではない。芯のあるシャープな高域は、上級モデルに搭載されるリングラジエター型ツィーターと同じ長所だが、Monitorに採用されるドーム型はそれよりも指向性が穏やかで、スピーカーの近くで音を聞いてもスピーカーから音が出ている感じがしない。音の広がりの良さ、定位感の素晴らしさはこのクラスのスピーカーでは間違いなくトップクラスだ。
低音は量感があり、引き締まってぐんぐん前に出る。Sonus Faberの最大の特徴であった「エンクロージャーの鳴き(響き)」がほとんど感じらず、低音がやや膨らみがちで遅れて出てくる感じが強かった従来モデルとまったく違う低音が出る。
曲が進むにつれて良い意味でアマチュア的な良さを感じさせる“他のSonus Faber”とは、イメージのまったく異なるサウンドに仕上がっているのが聞き取れる。少なくとも、Monitorの後に聞くSonus Faberの中でも飛びきりレトロなMinima
vintegeとは、180度方向が違う最先端のサウンドが鳴る。
ピアノは無駄な響きが少なく、ストリングスも繊細感、透明感が非常に高い。輪郭がしっかり描かれるお陰で、各楽器の定位感は素晴らしく、ホログラムのように各楽器が展開する。ボーカルは向こう側が透けて見えるほど透明感が高く、キリリと定位する。しかし、時折輪郭の強さが災いし、楽音がややエレクトリックに感じられることがある。そのせいか、音調はややクールな方向だ。これも従来のSonoufaberと大きく異なる。
逸品館がお薦めしている高性能=モニター系スピーカーの代表格はPMCであるが、驚いたことにMonitorはそのPMCに非常に近い音を出す。無駄な響きがなく繊細で透明。クリスタルガラスのように音像が定位する性格も非常によく似ている。Monitorの名前は伊達ではない。このようにMonitorは、音楽的(情緒的)というよりややオーディオ的(音質的)な方向から演奏を再現する。高性能になったのは間違いないが、このあたりは好き嫌いがはっきり分かれるだろう。特に従来のSonus FaberファンがMonitorの音をどう感じるか?懸念される。
付け加えになるが、一般的な30万円(ペア)クラスのスピーカーと比較した場合、Monitorは「最も音が細やかで、明瞭度が高く、S/N感の高い」スピーカーの一つに数えられる。ハイビジョン放送のようにきめ細かく明瞭度の高いMonitorは、10〜15万円(ペア)クラスのQUAD
11L2やB&W CM1などと比べて明らかに「格」が違った。
TITANIC
Music from the motion picture SRCS-8529
PMCのテストにはリファレンスとして度々「タイタニック」をテストに使ってきた。それは「タイタニック」をミックスダウンしたスタジオモニターがPMCだったという理由である。そこでこのソフトを使って、MonitorのサウンドがどれくらいPMCに近づいたのか?聞いてみることにした。
ボーカルの透明感や切れ味はLB1iほどではないが、それでもこのクラスのスピーカーとしてはずば抜けている。低音はサイズが信じられないほど豊かに出る。大型スピーカーのような重低音は出ないが、サブウーファーの助けなしでもそこそこの低音が出て音楽を充分に楽しめる。音の広がりはLB1iと同じように素晴らしいが、空間の透明感ではLB1iがMonitorを上回る。音楽的な表現力、説得力ではMonitorもLB1iに負けていないが、正確さ・自然さではLB1iが一枚上手である。
しかし、PMC並のモニターサウンドに仕上がっていると感じたMonitorもこのソフトを聞くと、“他の”Sonus Faberが持っている中音の響きの良さや温かさがもきちんと受け継がれていることが分かる。例えば、LB1i/Signatureでは“フラット”に聞こえる、一曲目がMonitorでは「大西洋」の冷たさや寒さがすこし薄らぐ感じがする。二曲目も暖かい春の雰囲気が出て、恋心の楽しさが自然と伝わり頬が緩むような音が出る。実際の映画を見ればタイタニックの恋物語は「厳寒」の中で展開しているから、Monitorの温度感はPMCより高いと言える。
セリーヌ・ディオンが歌う「MY
HEART WILL GO ON」では、もの悲しい悲哀の雰囲気が非常に良く出るが、PMCで聞くそれのようなキリリとした澄みきった冷たさではなく、より女性的で優しい雰囲気になる。どの曲を聴いても厳しい冬の寒さを連奏させるLB1iに対し、Monitorは常に暖かい春の日差しを感じさせる。
Minima
Vintage
Monitorは従来モデルからかなり音が変わったが、それでもSonus Faberの伝統的なサウンドは息づいていることがわかった。そこでSonus Faberの代表的な小型スピーカーMinima
Vintageと比較することでMonitorの特徴をより明確にしようと考えた。
Natalie
Cole “Love Songs” AMCY-6245
Monitorと比べMinima
Vintageは中域が響いて膨らみ、低音もやや遅れて音階が不明瞭になるが、その遅れや響きが「音楽にタメを出して」全体のリズムにゆとりが感じられるようになる。高音は当たりが柔らかく響き成分も多い。ツィーターの性能が高く、クロスオーバー周波数がより低いMinima
Vintage(2KHz)は、Monitor(3.5KHz)よりも音の数がかなり多く感じられる。
一般的にウーファーよりも軽く繊細なツィーターはより小さな振動まで再現できるため、ツィーターのクロスオーバー周波数が低いとスピーカーは音数が多くなり、音色も良くなる(感度の高い周波数エリアが広がる)傾向を持つ。しかし、大入力ではユニット面積が小さいツィーターは、ウーファよりも振幅が大きくなるため、クロスオーバー周波数が低すぎると「歪み」が大きくなる。そのため、ツィーターの「下限」とウーファーの「上限」を切り替える「クロスオーバー周波数」と「クロスオーバーカーブ」はスピーカーの性能を最も大きく左右する。Minima
Vintageの中〜高域の表現力がMonitorを上回るのは、クロスオーバーとカーブの違いによるものが大きいはずだ。
帯域全体ではMonitorの方が引き締まり、Minima
Vintageの音はそれと比べると明らかに緩く、同じスピーカーをトランジスターアンプと真空管アンプで聞き比べているような印象を持つ。正確さ、歪みの少なさではMonitorがMinima
Vintageを明らかに上回るが、味わいの部分ではMinima
VintageがMonitorを上回り、木質的な音が聞ける。仮にそれぞれのスピーカーの音をお酒に例えるなら、Monitorはシングルモルトウィスキーだ。切れ味が爽やかで薫り高く、透明感が舌に残る。Minima
Vintageはブランデーだ。香りがふくよかで甘みがあり、豊かな香りが舌に残る。このソフトで聞き比べる限り、2機種は明らかに「違う音」だと言える。
TITANIC
Music from the motion picture SRCS-8529
ナタリー・コールから想像されるよりも、中低音の膨らみが小さいことにまず驚いた。高音は、相変わらず繊細だが、これもナタリー・コールで感じられた癖がほとんど感じられず、澄みきってた伸びやかな高音が出る。空間を満たす音の粒子がとてもきめ細やかで、CDを聞いていると思えないほどだ。ダイナミックレンジも十分でピアニッシモからフォルテまで完全に再現される。
セリーヌ・ディオンのボーカルはきめ細やかでデリケート。Monitorよりも歌が上手に聞こえる。ナタリー・コールではMonitorの方が良いと感じた部分が少なくなかったのだが、タイタニックではあらゆる部分でMinima
VintageがMonitorを凌ぐ。それも、相当大きな差があるように感じられる。ソフトとのマッチングでスピーカーの評価がこれほど変わるのは今までになかったことだ。
MonitorよりMinima
Vintageの温度感はさらに高いと予想したが、それも覆された。このソフトで聞くMinima
Vintageの音色は、MonitorよりもLB1i/Signatureに近いイメージだ。LB1iよりも優しい音だけれど、LB1iのように輪郭が自然で透明感も非常に高い。ある意味ではLB1iを超える表現力を持っているといっても過言ではないくらい、耳になじむ自然で心地よい音が聞けた。