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TRILOGY(トリロジー) 906/907 Phono StageQUAD(クォード) QC24P 真空管式フォノイコライザーアンプ 音質比較テストイギリスの比較的新しいオーディオメーカー「TRILOGY(トリロジー)」の日本での取り扱いが始まりました。輸入代理業務は、「SON」が行います。 日本の公式ホームページはこちら ・ 英国の公式ホームページはこちら TRILOGY社の社長兼メインデザイナーをつとめる「Nic
Poulson」は、BBCで放送エンジニアとして働いた後、英国の主要空港の着陸誘導システムのデザインや、最近人気の高いオーディオ電源コンディショナー「ISOTEC」の設立を経て、1991年にTRILOGY社を設立しました。 今回は豊富な商品構成の日本市場に投入された製品から「906 フォノステージ」と「907フォノステージ」の二つのトランジスター式フォノイコライザーアンプを真空管式フォノイコライザーアンプのQUAD QC24Pと比較することにしました。 比較テストの概要をYouTubeで見られます。
製品の概要をYouTubeで見られます。
最近、アナログレコードがブームです。けれどアナログレコードはCDが登場する直前の1980年にピークを迎え、そこからは急速に衰退しましたから、最近の若い人たちは「レコードの仕組み」と「デジタルとの違い」を知らないかも知れません。そこで、簡単に「レコード」の構造をおさらいしておきましょう。 ・レコードの仕組み レコードの再生は、ディスクの溝に刻まれた振幅をカートリッジで拾い、それを電気信号に変換しますが溝に刻まれている振幅が小さいため、とても「小さな電圧」しか得られません。増幅機能を持たないレコードプレーヤーが出力する電圧は、1μV前後でCDプレーヤーから出力される電圧の1/1000程度しかありません。 詳しくはこちらのWEBページをご覧ください(ファイルWEBへのリンク) ・レコードを聞く方法 このためレコードを聞くには「フォノイコライザーアンプ」という、専用のアンプが必要です。 しかし、アンプにフォノイコライザー回路が内蔵されていても、カートリッジの小さな信号を増幅するための回路は、アンプ内蔵よりも「別置き」にするほうが音質的に有利なので、さらに良い音を聞くためには専用端子が備わっていても「フォノイコライザーアンプ」が必要になります。今回テストする「TRILOGY」や「QUAD」の「フォノイコライザーアンプ」を使った場合も、アンプに備わっている「フォノ入力」よりも音が良くなります(高価なプリアンプなどはその限りではない場合もあります)。 TRILOGY(トリロジー) 907 フォノイコライザーアンプ メーカー希望小売価格 \390,000(税別)
・907
Phono Stage の概要 ・筐体設計
・電源部
・増幅回路 TRILOGY(トリロジー) 906 フォノイコライザーアンプ メーカー希望小売価格 \140,000(税別)
・906
Phono Stage の概要 しかし、コストの制限を受ける製品でパフォーマンスを高く維持し、コストを低く抑えるには、本当の意味でのスキルと経験が必要です。パーツ点数が少ない906の各コンポーネントは、より高い性能を実現するため、TRILOGY社の社長兼デザイナー「Nic Poulson」によって慎重に評価され、開発され、精査され、906で実現できる最高の性能を発揮するように設定されています。 ・フルディスクリート回路・高音質パーツの採用 906の増幅回路には、安価で既製のオペアンプ集積回路は使われません。すべての回路は、シングルエンドのクラスAのディスクリート回路が使われ、907と同じく完全負帰還(ノン・フィードバック)の純A級回路で、高帯域幅と低歪みを実現しています。 DCサーボの採用により出力コンデンサーが取り払われた出力回路は、抜けの良い高解像度な音質を実現します。 ・幅広いカートリッジとマッチングが可能 ・カスタムメイドのトロイダルトランスと独自の回路で構成される電源部 ・イギリスでハンドメイドされています 906は、すべてイギリスでハンドメイドされ、他のすべてのTrilogy製品と同じ高水準に仕上げられています。 QUAD(クォード) QC24P 真空管式 フォノイコライザーアンプ メーカー希望小売価格 \360,000(税別)
・QC24P
真空管式フォノイコライザーアンプの概要 ・比較試聴の概要 Nottingham(ノッキンガム) Interspace HD メーカー希望小売価格 生産完了モデル
Goldring(ゴールドリング) EROICA LX メーカー希望小売価格 105,000円(税別) Goldring(ゴールドリング) EROICA H(高出力型) メーカー希望小売価格 115,000円(税別)
QUADの試聴は、内蔵するMCトランスを使った場合と、外付けの昇圧トランス「AIRBOW BV33」を併用した場合も比較しました。 AIRBOW(エアボウ) BV33(昇圧トランス) メーカー希望小売価格 350,000円(税別)・ 限定生産品
Vienna Acoustics Beethoven Concert Grand(T3G) (現金で購入)・(カードで購入)・(中古で探す) AIRBOW SA11S3 Ultimate (現金で購入)・(カードで購入)・(中古で探す) 試聴したソフトは、音の良いレコードから選んだ3曲です。ジャズ、電気楽器を使った女性ボーカル、交響曲を聴きました。
YouTube動画へのリンク ※
各フォノイコライザーから出力された信号は、アンプやスピーカーを使わず、ラインレベルのままダイレクトにA/D変換しています。 LA4「亡き王女のパヴァーヌ」の比較テストをYouTubeで見られます。※CDプレーヤーとの比較あり。
峰純子「ジェシー」の比較テストをYouTubeで見られます。※レコードのみの比較。
交響曲「展覧会の絵」の比較テストをYouTubeで見られます。※レコードのみの比較。
アマンダ・マクブルーム「Dreaming」の比較テストをYouTubeで見られます。※CDプレーヤーとの比較あり。
ウインドベルの音は透明感が高く、高音がすっきりと伸びていますが、角が立ちすぎることもなく、響きも美しく、純A級無帰還ディスクリート回路の素直な音の良さが感じられます。
ピアノは少しアタックが弱く、やや離れた位置で聞いているようなイメージです。
冒頭部分でのS/N感が高く、金管楽器とリスニングポジションの「距離感」や「コンサートホールの空間表現」が実に見事です。 イントロ部分のシンセサイザーの重量感がしっかりと再現されます。アマンダ・マクブルームの声の「太さ」も良く出ます。伴奏とボーカルの分離感も秀逸で、透明感の高い濁りのない音です。
総合評価 907の音は、906と全く同じです。いいえ、906が後に作られたので、906が907と全く同じという言い方が正しいでしょう。
ピアノのハンマーが弦に当たった瞬間の「アタック(打鍵感)」がきっちり再現されます。
演奏の表現すべきものは906と907で完全に一致します。けれど、細部の音の質感が向上し、密度感も向上することで、907ではコンサートホールがより上質になり(座席の位置が良くなり)、楽団員が増えた(楽器の数が増えた)ように感じます。 イントロ部分のシンセサイザーの透明感と色彩の鮮やかさ、アマンダ・マクブルームの声の迫力が一段と引き立ちます。アマンダの声は「美空ひばり」に少し似ているところがあると思うのですが、そういう本物の歌手が持つ「迫力」が際立ってきます。シンセサイザーの響きも、より長く尾を引くようになりました。 総合評価 QC24P(内蔵トランス) イントロのウインドベルの「密度感」では、907がQC24Pに勝ります。フルートやドラムの「密度感」も同じです。QC24Pの魅力は、真空管+昇圧トランスが持っている「ある種のオーバドライブ感」です。 ピアノの「打鍵感」は、907とほぼ同じイメージです。ボーカルは、色彩感がわずかに濃く、峰純子さんの「息づかい」まで伝わるようです。 イントロ部分の金管楽器の音に「演奏者の唇の動き」のようなものが感じられるようになります。弦楽器も、奏者の弓を動かす感じが見えるようです。 また、この曲でも真空管と昇圧トランスを使った「オーバドライブ感(響きの演出効果」で、演奏の主題や躍動感が強調されて聞こえるのが、上手くいっているのでしょう。QC24Pで聞く方が、私にはなんとなく、よりリアルに聞こえます。 イントロのシンセサイザーの音が軽やかです。アマンダ・マクブルームの声もさわやかで、年齢が10歳くらい若く感じられます。私は生でこの曲を聴いていないので判断できませんが、907もQC24Pも、どちらの音も「本物」に聞こえます。ただ、録音の良いこのレコードでは、907の持っている「圧倒的なHiFi感(質感の高さ)」をより魅力的に感じます。 ライブ演奏の楽しさは、QC24Pがより良く演出し、優秀録音盤の質感の高さは、907が上手くそれを引き出すようです。 + 昇圧トランスを内部からBV33に変えるだけで、楽器の音の質感が俄然向上します。フルートやドラムの音の密度感、質感が向上します。ドラムの重量感、ブラシの鮮やかさ、ウッドベースの断弦感などのアタックが、音の立ち上がりの早さの改善で向上します。 内蔵の昇圧トランスでは、密度感が907にやや劣るように感じましたが、BV33を使うと密度感が向上し907に匹敵するようになります。また、内蔵トランスで感じられた「誇張感」も無くなります。 イントロのピアノの音が「本物」らしくなりました。ピアニストのタッチは、内蔵トランスの方が際立ったように思いますが、ボーカルとのマッチング、ウッドベースとのマッチングが向上し、演奏の一体感が群と濃くなります。 やはり、良い意味で「普通の音」になります。違和感がなく、生演奏を聞いているイメージです。 意外なことに、BV33のもつ癖のなさと質感の高さが、この曲にぴったりとマッチします。 完璧です。 総合評価 2017年2月 逸品館代表 清原裕介 |
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