電源を入れて出た音は、解像度と透明度が高く現代的なハイエンドの製品にふさわしい音質。通電開始、15分まではやや堅い高域よりの音質だったが、約2時間でウォーミングアップはほぼ完了し、中域に滑らかさと厚み、色気が出てくる。
スピーカーにPMC IB1Sを使い、まず最初にCDプレーヤーを
AIRBOW CC4300/Special
と組み合わせて、話題の人「ノラ・ジョーンズ」のデビューアルバムを聴いてみた。
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NORAH
JONES
Come away with me
Format:PCM 44.1KHz/16Bit
輸入盤:7243 5 32088 2 0
2002年録音 |
言わずと知れた、ノラジョーンズの大ヒットアルバム。一部分でノラの声が歪んでいるし、録音は褒められたものではないが、音楽的に優れていることと、持っている人が多いこと、聞き慣れたソフトであることからこのソフトを最初に聞いた。
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DARTZEELは、透明度が高く素直な音質のCC4300/Specialの持ち味を存分に引き出して、この価格のCDプレーヤーで聞いているとは想像できないほどクォリティーの高い(D/Fレンジが広く、透明度と明瞭度が高い)音を聞かせてくれる。試しに、3号館に設置している AMPZILLA 2000 + AMBROSIA 2000(以下AMPZILLA)のセットと比較してみると、音の細やかさや芯のしっかりした感じ(輪郭の明瞭度感)は、明らかにDARTZEELが高く、まるでフルスペックのハイビジョンを観ているような非常に細やかに音楽を再現する。
音の細やかさを映像に例えるなら、感覚的にAMPZILLAが100万画素ならDARTZEELは200万画素くらいあるように感じる。
AMPZILLAが音の広がりに優れふわっと体を包み込むように、あたかもサラウンドで聞いているような音場を形成するのに比べ、DARTZEELはそこまでの音の広がりはない。音場の大きさでは、しごくまともHiFiアンプという印象だ。
ボーカルの表現力も違いがあって、AMPZILLAは開放的でノラ・ジョーンズの歌がカントリーソングに聞こえる(どこか牧歌的な雰囲気)のに対し、DARTZEELは佇まいがきちんとしていかにも超高級ライブハウスで歌っているという感じになる。ハリウッドスターの正装が似合う雰囲気だ!ちょっと取っつきにくい感じがなくもないが、このちょっと高貴な感じはそれはそれで悪くないものだ。
次にCDプレーヤーを
に変えてみる。解像度がぐんと上がり曖昧さが消えてピントがピシッと合う。「音から雰囲気を味わいたい派」の音楽ファンには、堪らない音だろう。聞こえない音はない!と断言したくなるほど、克明に音が聞こえる。
しかもそれがきちんとした音楽的表現を伴っているところがすごい。初期のゴールドムンド的なスピード感と、FMアコースティック的な柔らかさが上手くバランスしている。情に流されず、角も立たないといった音だ。さすがにドイツ人?らしい知的さを感じさせられる。感動しても、ノリが良くても、羽目は外さないといった感じの音だ。良くできていると思う。
ここでソフトを変える。カントルーブ編のオーベルニュの歌。ボーカルは、ナタニア・ダブラツ。
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Song
of the
AUVERGNE
NETANIA DAVRATHFormat:PCM 44.1KHz/16Bit
キングレコード:KICC 2174/5
1985年録音
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カントルーブ編の「オーベルニュの歌」ボーカルと比較的大編成の管弦楽団で構成される「フル・アコースティック」の壮大な歌曲。
生楽器が奏でる「ハーモニー」の美しさが、ありのままに再現されるか?この歌曲の多用な表現が描き分けられるか?アンプの「音楽性」が厳しく試されるソフト。
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念には念を入れてプレーヤーも
AIRBOW UX1 Supreme emotion
に変更する。3号館では、最もいい音が出せるはずのプレーヤーである。
このソフトを選んだ理由は、AMPZILLAとDARTZEELでこの牧歌的な歌がどれくらい雰囲気が違って感じられるか?を聞いてみたいと思ったからだ。音質(音のクォリティー)では、DARTZEELに及ばなかった感のあるAMPZILLAだが、アンプの「音楽的表現力(音楽性)」や「ソフトに対する追従性(ソフトを選ばす良い音で鳴るか?)」を比較・確認しようという目的である。
DARTZEELでは思った通り、非常に窮屈なスタジオ、もしくは小さめのホールで、複数のマイクを使って律儀に音楽を作っている様がありありとわかる。残念ながら、「オーベルニュの歌」が持っている、大らかさは表現されない。私の目差している方向とは明らかに違う「なにも引かず、なにも足さない、あるがままの音!」を再現する。
やはり、と言う思いを持ちながらアンプをAMPZILLAに変えてみる。出だしの一音から世界が違う!オーベルニュ地方の厳しい自然と、そのなかでたくましく生きる人々の有様が伝わってくる。歌を聴くだけで、カントルーブがこの曲で「何を表現したかった」かが、ひしひしと伝わってくるようだ!これぞ、私が求めていた音、レコードで何度もこの曲を聞いた音、雰囲気そのものだ!そのスペクタクルな多彩な表現力と、体を包み込む立体的な音場に体が震えるほどだ。
ねらい通り、このソフトはそれぞれのアンプに違いを如実に顕在化してくれた。DARTZEELで聞く「オーベルニュの歌」は、現代的HiFiサウンドの象徴のような「ソフトが解凍されていない圧縮状態の音」がそのまま出てくる。窮屈で冷たく、躍動しない。音の細やかさもノラ・ジョーンズのソフトを演奏したときとは対照的に、このソフトでは音が広がらず小さい点に凝縮するような鳴り方をするDARTZEELの情報量は、AMPZILLAよりも明らかに少ない。
AMPZILLAで聞く「オーベルニュの歌」は、見事に解凍・再現された最高の音楽に感じられる。この「オーベルニュの歌」を音楽として「感動的に聞きたい」と考える方にとって、両者の差は非常に大きいだろう。AMPZILLAとこのソフトの相性は抜群だ。
「オーベルニュ地方」には、行ったことがないがこの歌を聴いているだけで、それも最初の数分だけで、その土地柄までわかると思えるような音でAMPZILLAは、ソフトを文字通り「蘇え」らせる。今は聞けないコンサートの再演を、その雰囲気の再現を目的とするなら、やはりAMPZILLAの表現力とソフトへの対応性は素晴らしい。これこそ私が考えるオーディオの醍醐味そのものだ!
オーベルニュの歌では、あまりにその差が大きすぎたため比較できないほどだったので、両者の差を冷静に比較するために、そして何よりもDARTZEELの良さを引き出すためにソフトを変えてみた。
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YUMI ARAI
MISSLIM
Format:PCM 44.1KHz/16Bit
ALFA:ALCA-5242
1974年録音 |
日本の歌謡曲の代表として選んでみたが、録音がやや古すぎてDARTZEELには、合わなかったかもしれない。聞いたのはA面4曲目の「海を見ていた午後」。この時代には珍しくシンセサイザーが使われている。
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ユーミンの「海を観ていた午後」。この録音はマイクの構成が単純でわかりやすい。雰囲気よりも精度の高い方がこのソフトの良さが出るだろうと考えたのである。結果は?またしてもDARTZEELの惨敗。ユーミンが全然色っぽくない。スタジオの中で緊張でこちこちになってこぢんまりと歌っている。AMPZILLAで聞くユーミンは、大人のいい女に感じられるから、このソフトでも両者の差は非常に大きいと言わざるを得ない。
でも最初に聞いたノラ・ジョーンズでは、こんなに大きな差は感じなかった。疑問に感じたので、アンプをDARTZEELのままプレーヤーをUX1 Supreme emotionからSA8400 Specialに変えてみて驚いた!遙かに安いプレーヤーなのにこっちの方が音が良いのだ!
一体どういう事なのか?3号館に設置している機器では、多少の相性があったとしてもUX1 Supreme emotionとSA8400 Specialでは、当然のように大差がでるのにDARTZEELでは、プレーヤーの評価が逆転する。どうしてなのだろう?
確認のためプレーヤーをAIRBOW UX3SE Supreme emotionに変えてみる。多少音は細かくなったが、大差はない。もう一度UX1 Supreme emotionに戻してみる。良く聞くと、細かい音がいっぱい出ているのはわかる。だが、それがソフトの音楽性を高める方向に繋がらない。
プレーヤーをSA8400 Specialに戻す。輪郭がキリッと立ち上がって、HiFI的に非常に心地よい音になる。DARTZEELと非常に相性が良い。プレーヤーはそのままでアンプをAMPZILLAに変えてみる。音の細かさはさほど変わらないが、表情に色気が出て変化が深まる。UX1 Supreme emotionで比較したDARTZEELとAMPZILLAで感じた差がSA8400 Specialでは1/10くらいになってしまう。SA8400 Specialを基準のプレーヤーとするなら、双方のアンプの評価は好みでどちらでも良いかな?と言う範疇に収まってしまうのだ。相性と言うには、プレーヤーにとってあまりにも酷だ。UX1 Supreme emotionは、すでに20台近くがリリースされ、お客様には大好評だから、今回のテストでプレーヤーの音質差が出せなかった原因はDARTZEELにあることは間違いない。
まとめ
単独で聞くとDARTZEELは、高級品らしく非常に良くできたHiFiアンプという印象だが、組み合わせるプレーヤーとのマッチングでアンプの音がコロコロ変わる。AMPZILLAが、プレーヤーでその個性が変わらないのとは対照的だ。プレーヤーがアンプを生かし、また殺してしまう。
プレーヤーを基準にするとDARTZEELは、その相性でプレーヤーを生かし、また殺してしまうと言うことになる。スピーカーを変えても、DARTZEELの個性に大きな差は出ないから、やはりこれはアンプの個性(癖)と言うべきなのだろう。
DAETZEELは、私が好むと好まざるにかかわらず現代HiFiの目差している「ゲイン、オブ、ワイヤーの延長線上に最高の音楽表現がある」という方向に正しく向いている。あえて、それに背を向けて唯一独自の道を歩むAMPZILLAとは、好対照のアンプであるかのように。その性能は間違いなく高く、現代HiFiを突き詰めようと考える方には、最高のアンプになれると思う。ただしスピーカーもソフトもその方向の製品を選ぶべきだ。究極の「ゲイン、オブ、ワイヤー」を突き詰めた音も決して悪くはない。ただ、その代償として「汎用性」は、確実に低くなる。そのシステムは、ソフトを厳しく選びプレーヤーを選り好みする。相性がはっきり出る。「楽しく聞ける音楽が限られてしまう」そういう性格は、購入を考えるときには忘れてはいけないと思う。
PHASE
TECK CA-1と突き詰めようとする音質の方向は似ているが、CA-1はより寛容だ。DARTZEELほど過激にソフトやプレーヤーは選ばないが、不思議なことにオーディオ的には、寛容さのないDARTZEELにより可能性を感じることがある。「鳴らし切る!」と言う実感をこれほど強く与えてくれる製品も少ないからだ。
売価に比例して失敗したときの落胆は大きくなる。その逆に成功したときの満足感も図抜けて高い。危険が大きいがそれを「趣味性」と潔く切り捨てられるならチャレンジする価値はある。あえて茨の道を歩むような「ばかなこと」を正当化できるのが、オーディオの世界だ。DARTZEELの実現する「ピンポイントの世界」が実現できるなら、高価な代価を支払うことを躊躇う必要はない。そうはいっても、懐に余裕がなくてこのアンプの購入を考えるときには、必ず「自宅試聴」を申し込んだ方が良いと老婆心なアドバイスをしておきたい。
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