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Phasemation EA-2000 音質チェックPhasemation EA-2000 音質評価 販売 価格 展示

  

コロナ禍の先すら見えない2020年12月、Phasemationから300万円という超弩級のフォノイコライザーアンプが発売されました。電源部、増幅アンプ部、昇圧トランスが左右ぞれぞれ専用筐体に納められた合計6筐体の「EA-2000」の300万円というプライスタグをどう考えるかは人それぞれだと思いますが、300万円を単純に6で割って一台が50万円だと考えれば、それほど非常識な価格とは思えなくなりますし、それほど数が売れないこのモデルに要した開発費なども考慮すれば、むしろ良心的だとすら感じられます。

たぶん「元は取れない」と思える、この「EA-2000」は「商品」としてではなく、最初から「作品(一種のモニュメント)」として作られたのかもしれません。

EA-2000の詳細な内容は、ネットを調べれば簡単に出てくると思います野で、このページではその概要のみ紹介するに留めます。

EA-2000の概要

カートリッジ(レコードプレーヤー)から出力された信号は、圧倒的な情報量で私を驚かせたPhasemationモノラル昇圧トランス「T-2000(90万円/ペア)」に特別チューニングを施された、EA-2000専用の「昇圧トランス(EA-2000T)」に導かれます。

EA-2000Tの入力は、RCAとXLR(バランス)ですが、使えるのはどちらか一方で同時接続は出来ません。出力はRCA(アンバランス)1系統のみです。EA-2000Tを必要とするのは、MCカートリッジの使用時だけなので、MMカートリッジをお使いの場合、この高価な昇圧トランスは不要になります。けれど、EA-2000は、同社のフラッグシップMCカートリッジ「PP-2000」の高性能を引き出すために作られたはずなので、このようなセットになっているのでしょう。MMカートリッジをお使いの場合には、EA-2000Tを使わず、フォノイコライザーアンプ本体「EA-2000EQ」に直接繋ぎます。

EA-2000の心臓部、フォノイコライザーアンプ本体「EA-2000EQ」は増幅部と電源が完全にモノラル化された4筐体で構成されます。(電源部は、EA-2000PS)。

 

EA-2000EQの入力は、RCA(アンバランス)3系統切替式で、出力はRCAとXLRが各1系統です。イコライザーカーブは、3種類用意されステレオには「RIAA」のみ、モノラルには「Mono1(DECCAレーベル等で使用)」と「Mono2(コロンビアレーベル等で使用)」が用意されています。Phasemationは、これによりDECCAレーベルもコロンビアレーベルもより高忠実度再生が可能となると説明しています。

EA-2000内部に導かれた信号は、12AX7Aのローノイズ高信頼管「ECC-803S」を使う無帰還SRPP回路で増幅された後、Counter Point「SA-5000」が使ったことで一般に広まった"6DJ8"の高信頼管「6822」を使ったカソードフォロワー回路で超低インピーダンスに変換されて出力されます。イコライザー回路は、信号を低インピーダンスで処理できるLCR型が採用されていますが、L=コイルはPhasemation自社製造品、C=コンデンサー(キャパシタ)とR=抵抗は、オーディオ用の最高グレード品が使われるなど、高音質へのこだわりが詰まっています。

電源部にもPhasemationが培ってきた高音質技術が満載されています。

電源部で交流(100V)を必要な電圧の直流に変換するための整流回路には、交流がアースを横切り極性が反転する際に「切り替わりノイズ(スイッチングノイズ)」を発生する「半導体」に変えて、ノイズが出ない真空管(整流管)が使われています。直流変換された電流は、トランスを使うノイズフィルター「チョークコイル」を通過してコンデンサーに蓄えられます。整流回路以外の部分でも、変換損失の少ない大容量Rコアトランスなど贅沢な部材が惜しみなく投入され、フラッグシップモデルにふさわしいクリーンで強力な電流を生み出しています。

外観は、Phasemationの高級モデルに共通する20mm厚アルミスラントフロントパネル、ウォルナット単板底板などが使われています。

Phasemation EA-2000       メーカー希望小売 3,000,000円(税別)

Phasemation(フェーズメーション)製品のご購入お問い合わせは、経験豊富な逸品館におまかせください。

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試聴環境

EA-2000の試聴には、プレーヤーシステム「YAMAHA GT-5000」にフォノイコライザーアンプの比較対象として現在私がリファレンスとして使っている「昇圧トランスAIRBOW BV-33(生産完了モデル)と真空管フォノイコライザーMANLEY Chinookをカスタム化した製品、AIRBOW Chinook Ultimate」(生産完了品)を用意しました。

試聴するカートリッジは、PP-2000が手元になかったのでPhasemation代表として所有する「PP-500」を、さらに所有する最高級カートリッジ「TOP WING 朱雀」、Chinook Ultimate(生産完了品)に組み合わせている「Goldring EROICA GX」の3のカートリッジを聞き比べました。

試聴レポートは、EA-2000EQのアンバランス出力をUSBインターフェイス経由でAIRBOW PM12OSE MASTERに入力し、モニタースピーカーは、Focal SPECTRAL 40thとAIRBOW CLT-5の組み合わせで書いています。

音質サンプルとしてYouTubeにアップロードしている動画(準備中)の音声は、EA-2000EQの出力を録音したものです。

 AIRBOW CLT-5 販売価格 175,000円(ペア・税別)〜現金で購入)・(カードで購入

 Focal Spectral 40th

 AIRBOW PM12 OSE MASTER 販売価格 450,000円(税別)〜現金で購入)・(カードで購入

レコードは、次の5枚を用意しました。

アナログ時代のJ-POPの代表として、「ライオンとペリカン/井上陽水」

デジタル録音全盛期に作られたレコードの代表として「come away with me/Norah Jones」

音質にこだわった日本レコードの代表として「Child is Bone/峰純子」

歴史的な名演奏の代表として「Beethoven Concerto EN RE MAJEUR,OPUS 61/David Oistrakh」

大ヒットしたアナログ時代のFusionの代表として「NIGHT・BIRDS/Shakatak」

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音質評価 Phasemation EA-2000/PP-500

  

 とまどうペリカン

J-POPのレコードを聞いているとは思えないほど、上品なサウンドが出てきた。S/Nが驚くほど高く、滑らかできめ細やかな音は、まるで最新の4K映像を見ているようだ。井上陽水の声が甘くセクシーに聞こえる。低音の量感はたっぷりで、ベースの押し出し感も心地よい。

サウンドテイストはややモニター的な味付けで、雰囲気を楽しむより音質に聞き惚れるイメージがやや強い。

さまざまな音が頭の中でクルクルと回り、演奏が終わって音が消えた後も、頭の中に長く音が漂っていた。

 Cold Cold Heart

レコードの状態が少し悪いのか、チリチリとしたノイズが聞こえるが、演奏が始まるとほとんど気にならなくなった。

ウッドベースとボーカル、ギターの分離がとても明確で、ピアノの音がそこからスッと抜けてくる。

中低音の太さが印象的でピアノのとの厚みは圧倒的、グランドピアノらしい分厚い音が聞ける。

このディスクはデジタルマスターからレコード化されているはずだが、少なくとも一般的なレコードシステムで聞くとそう聞こえるのだが、それがとても滑らかでアナログ的に聞こえる。

ボーカルの艶っぽさ、唇が濡れたような感じ、ピアノのくっきりした打鍵感と響きの豊かさ、EA-2000+PP-500のコンビネーションはゴージャスにこのレコードを奏で、デジタルにはなかった魅力を見事に引き出してくれた。

 My One end Only LOVE

イントロ部分のピアノが素晴らしい。よいピアノを名手が奏でると、こんな音が出るというお手本のような音だ。

ボーカルは甘く、太く、そしてとても艶っぽい。ピアノとボーカルのコンビネーションが生み出す、官能的な世界。

Heaven(天国)という歌詞を峰純子がつぶやくと、二人だけの愛に包まれた世界が脳裏に浮かぶ。絶妙なソフトフォーカス感で!

「触れるあなたの手」、「触れ合う頬」、「あなたのと全てのキス」・・・。英語に堪能ではない私でも、歌詞がリアルな情景に変換されていく。

夢の名残りを惜しむようなピアノの最後の一音が、深く体の奥底にいつまでも響いた。

 Beethoven Violin Concerto 

音が出ると同時に、目の前に出現する広大な空間。恐るべき深みのある奥行き感。

コンサートホールのS席ではなく、天井に吊り下げられているマイクの位置でライブを聞いているようなクリアな音場が展開する。

何かが回転しているとか、電気的に増幅している装置が存在するとか、スピーカーが鳴っているとか、全ての存在が消えて目の前には再演奏されているコンサートだけがある。音楽との演奏との圧倒的な一体感。体を濃密に包み込むサウンドと、それが大きく変化して出現する圧倒的な躍動感。高音は切なく、低音は甘く太く。目まぐるしくその音色が変化する。

長い序章の後には、オイストラフの暖かく官能的なバイオリンがスッと入ってくる。

デジタルを決して悪くいうわけではないけれど、この音楽との一体感はやはりアナログでなければ生み出されないだろう。否、この音を聞くと「デジタルとアナログはそもそも違うメディア」なのだと痛感させられる。この響きの濃さ、甘さ、美しさは、やはりアナログだけのものだ。

演奏を取り巻く歴史や、培われた文化の豊かささえ伝わるような素晴らしいサウンド。時を超えて名演奏が見事に蘇った。

 Night Birds

肩の力がすっと抜けるような軽快な曲を最後に選んだのは正解だった。この曲は、いわばゴージャスなフルコースの後の爽やかなデザート。

けれど、そのデザートは決してタダものではない。透き通るクリスタルグラスのカップに盛り付けられた、色とりどりのフルーツ。透明なジェルが絡み生まれる、すっきりとした透明感のある甘み。鼻に抜ける爽やかな香り。フルコース抜きでデザートだけを食べたとしても、今日1日を満足して終われるだろう。

しっかりとしたベースラインに支えられ、軽快に弾むリズム。リズムに鮮やかなアクセントを加えるピアノの色彩。心を癒してくれる、女性コーラス。昼間のストレスから解き放たれ、夜に向かって高まってゆく期待感。

Night Birdsという題名にふさわしい、そういう心の変化が見事に再現された。

  

音質評価 Phasemation EA-2000 / TOP WING 朱雀

 とまどうペリカン

カートリッジをPhasemation PP-500から、TOP WING 朱雀に変えると音の密度が高くなり、音場がより濃密になった。

井上陽水の声もより深い抑揚を伴って、プロっぽく聞こえるようになる。伴奏の楽器の音もより高価な音になり、奏者の腕前も一段と上がったように感じられる。

耳に聞こえてくる音の情報としては、それほど大きく変わっていないのかもしれないが、雰囲気の出方は明らかに違う。やや平坦に聞こえたこの曲のイメージが、より濃密で深いものへと変化している。

PP-500では、やや客観的で薄目だった感動の温度が上がり、演奏が心の中にまで届くドラマティックなものに変化した。

朱雀」への変更は、音質よりもイメージの変化が大きい。

 Cold Cold Heart

心なしか高域のチリチリしたノイズが気にならなくなってきた。

朱雀の音質は、PP-500よりもCDでこの曲を聞いている時の雰囲気に近い。音場の密度や色彩は濃くなっているが、カートリッジの付帯音やカンチレバーの響きが少なくなったからだろう。意外だが「アナログ的な味わい」は、PP-500の方が濃かった。

朱雀の構造の特徴から生み出される音質は、よりストレートだけれど音楽的な感動は大きい。朱雀は、PP-500よりもさらにHiFi調だが、演奏もしっかり楽しませてくれる。ピアノの音のリアルさが耳に残った。

 My One end Only LOVE

本格的なカートリッジは、やはり本気の録音を聞かなければその真価はわからない。期待しながら、録音の良いこのレコードに針を落とす。一音が出た瞬間、PP-500で感じていた「モヤ」が晴れて、見通しが良くなったことを感じる。

けれど・・・。この曲でも、意外だがレコードをよりアナログ的に楽しませてくれるのはPP-500だった。

PP-500では演奏にのめり込んでいけたが、それが朱雀では素晴らしい演奏を「聞き惚れている」というイメージに変化する。

音は素晴らしく、PP-500では聞き取れなかった、細かい音までハッキリと聞き取れるようになる。けれど、全ての音があまりに鮮明すぎて、現場が見え過ぎてしまう。音質は朱雀、雰囲気はPP-500だが、これは今まで聞いてきた他のフォノイコライザーとは結果が逆だ。EA-2000には、Phasemationのカートリッジがマッチすると言うことなのだろうか。

後日でも良いから、EA-2000にPP-2000を組み合わせて聞いてみたくなった。  

 Beethoven Violin Concerto 

この曲で聞く「EA-2000+朱雀」は、今まで聞いた3曲と印象が異なる。

PP-500に比べると、前後方向への音に広がりはやや浅くなり、音源までの距離も近くなる。再生される音がより正確になったためか、PP-500で感じた天井の吊り下げマイクの音ではなく、S席でコンサートを聞いている印象に近くなった。

PP-500では聞こえなかった、楽器の細やかな音までしっかりと再生される。例えばPP-500では聞き取れなかった、管楽器奏者の「ピッチのミス」だとか、弦楽器奏者それぞれの弓使いの違いのようなまで聞き取れる気がする。それほど情報量が圧倒的に増えたのだろう。

ただ、フォノイコライザーアンプとの相性なのだろうか、PP-500の方が音の広がりが大きく立体的だったのも間違いはないし、オイストラフのバイオリンの音も、やや乾いた印象で「オイストラフらしいふくよかさや甘さの表現」は、PP-500が朱雀を上回っていた。

PP-500の方が抽象的で味が濃く、朱雀はより薄味だがそれぞれの音に深みがあって写実的。

この印象も、今まで私が経験してきたものと違っている。  

 Night Birds

朱雀はPP-500に比べて明瞭度が高く、音がぐっと前に出てくる。同じスピーカーで聞いているとは思えないほど、音場の出方が違う。PP-500の方がステレオ的な音場の広がりを持ち、朱雀はややモノラル的に聞こえるが、音源それぞれの位置関係の明確さ、音の細やかさや情報力は圧倒的に朱雀が優れている。

Phasemationは、朱雀のストレートフラックス方式よりも、自社のMCカートリッジが優れていると主張するが、EA-2000PP-500と朱雀を聞き比べるとその主張に頷きたくなる。しかし、それはあくまでもPhasemationPhasemationのカートリッジのために作り上げた、フォノイコライザーアンプだから、当然の結果であってアンプを変えれば結果は容易に変化する。

頂点を極めようとすると、頂上の面積は狭くなる。少しだけ高さを低くするだけで、頂上はもっと広くなる。

高級品の難しさとはこう言うところにある。

比較に選んだ、AIRBOWのフォノシステムの狙いはそれを明確にしたかったからだ。

EA-2000と朱雀は、このレコードには少々ミスマッチングのようだから、システムを変えて聞き直すことが楽しみだ。  

 とまどうペリカン

自分の好みに合わせて作った「音」だからなのだろうか、一音から雰囲気の良さを感じる。

フォノイコライザーと昇圧トランスの合計価格は100万円に満たないが、音の細やかさや、滑らかさ、色彩感もEA-2000とそれほど遜色はなさそうだ。楽器とボーカルの分離は優れているし、きめ細やかさも滑らかさも十分だ。

このシステムには、何よりも「説得力」がある。井上陽水が表現したいこと、この曲のイメージがストレートに伝わってくる。

音質はもちろんだけれど、この曲がイメージする世界へとスッと入っていける。音の広がりは、EA-2000+PP-500と朱雀のちょうど中間くらい。響きの長さは、EA-2000+PP-500とほとんど同じ。

色彩感も濃い。高域に僅かな「オーバドライブ感」があるが、その僅かなエフェクトがこの曲をよりドラマチックに聞かせてくれる。  

 Cold Cold Heart

高域のノイズ感は、これまで聞いた中でもっとも気にならない。

中低音が太く、ノラジョーンズのボーカルは艶があり暖かい。音場がほんの少し濁っているのだが、それがソフトフォーカス感を演出し、良い味わいを引き出している。

ピアノの音は重みがあり、ピアノらしい味わいを持つ。ウッドベースは驚くほどリアルで、ギターの音も、ボーカルも、それぞれがこうあるべきという音で再現される。

生演奏を聞いているのとは少し違うけれども、安心して心地よく演奏を聞いていられる。 

 My One end Only LOVE

イントロのピアノがそれらしく鳴るが、あくまでもレコードで良い演奏を聞いているという範囲からは逸脱しない。背伸びしないとでも表現すべきだろうか、無理をしているようなオーディオ的な不自然さがまったく感じられない。

システムの存在感はない。けれど生音ほど鮮やかなイメージもない。全てが、ソフトフォーカスに包み込まれている。EA-2000+PP-500のような「夢見心地」の世界には引き込まれない。けれど、これはこれで安心して演奏を楽しめるバランスに達している。

EA-2000+PP-500は正装の味わいで背筋がぴんと伸びる。Chinook UL+Eroica GXは普段着の味わいで、聞いていると眠くなる。

体の力が全部抜けて、リラックスできる音。

演奏が終わると、峰純子のビブラートが脳裏にリフレインしていた。

 Beethoven Violin Concerto 

先に聞いた2つの組み合わせに比べると、リラックスした演奏に聞こえる。多分実演に最も近いのは、EA-2000+PP-500だと思うが、1日の疲れを癒すにはこう言う音も悪くない。

EA-2000+PP-500に比べると、座席が少し後ろになったような感覚で、それぞれの音は、それほど明確には再現されないが、ハーモニーの複雑な重なりや、ホールの響きの美しさはきちんと再現されている。大音量時に、空間がパッと大きく広がるのも生演奏を彷彿とさせる。低音はしっかりして、それぞれの楽器の音も明確に聞き分けられる。

オイストラフのバイオリンの音は、EA-2000+PP-500に比べると鮮度がやや落ちるが、今の音の方が心穏やかに、リラックスして演奏を楽しめる。味わいが明らかに違う。この曲も正装と普段着の違いがある。

このシステムの音質はEA-2000に及ばないが、ダイナミックレンジの広さ、音の変化の大きさは遜色がない。それどころか、少音量と大音量の「エネルギー差」は一番大きく再現されているような気がする。

演奏が躍動するから、ジャンルや録音を選ばずに、音楽が躍動的に再現されるのだろう。

さまざまなハイエンドアナログを聞き、さまざまなジャンルと録音のレコードを聞き、最終的に自分がこう言う音にたどり着いた「理由」が、この曲を聞いてよくわかった。  

 Night Birds

学生時代にレコードを買い、録音したカセットテープがすり切れるまでカーステレオで何度も聞き直したそのレコードが、その時とは格段に違う音で鳴る。

私の30年のオーディオ経験で磨かれ音質は比べられないほど向上した。けれど、音質が向上すればするほど気に入っていたレコードのアラが見えてくるジレンマに陥る。大学時代の感動を変えないためには、結局バランスが一番大事なのだ。

私の最新リファレンスシステムは、このレコードに刻まれた楽器の「それぞれ存在感」をぐっと強く、その違いを原色の鮮やかさで引き出してくれる。

なぜ、楽器が複数必要なのか?

なぜ、メロディーが複数あるのか?

綺麗に分離する音からは、その意味とその重要性が明確に伝わってくる。

リズム、メロディー、ハーモニーがバランスして醸し出される「感動のダイナミズム」。結局、オーディオは「そこ」に到達できるかどうかが?大切なのだと実感できる。

誤解を避けるためにあえて書くが、オーディオのゴールは一つではない。季節に四季があるように、オーディオが描き出す音楽の美しさにもバリエーションがあるべきだ。

今回の試聴では、今までにも増してそう強く感じた。  

 とまどうペリカン

レコードシステムはそのままにして、カートリッジだけ「EROICA GX」から「朱雀」に変える。当然、音質が一気に向上する。

EA-2000との組み合わせでは、響きがやや少なく、音の広がりも小さかった朱雀だが、このシステムではその印象がガラリと変わる。

Eroica GXと比べると朱雀はやはり少しモニター的だが、それぞれの音の分解能と細やかさ、癖のない自然な感じはEA-2000よりもChinook Ultimate(生産完了品)との組み合わせの方が好ましい。

曲のイメージは一段と大人びて、井上陽水の年齢が一回り大人になったように感じられる。

井上陽水は、プライベートコンサートで間近で聞いたことがある。今聞いている音は、そのイメージに最も近い。

 Cold Cold Heart

同じ曲を繰り返して聞くと徐々に感動が薄れてくる。もう4度目になるから、さすがに感動が薄れてきた。

段々と筆が重くなる。けれど、それは音質がいい意味で平均している現れでもある。つまり、それぞれのおとが、でっこみひっこみなく「良い音だった」と言うことだ。

「耳」を音楽ファンから、オーディオモニターに切り替えて評価を書く。

朱雀とChinook Ultimate(生産完了品)の組み合わせで聞く、ウッドベース、ピアノ、ボーカル、ギターの音の質感や分離感は、EA-2000+PP-500にほとんど引けを取らない。S/Nも十分に高い。

EA-2000との組み合わせだとモニター的なHiFIサウンドに感じた朱雀だが、AIRBOW Chinook ULとの組み合わせだと、モニター的だけれども音楽的なイメージも強まってちょうど良いバランスになった。

 My One end Only LOVE

イントロのピアノが「清々しい」音になった。

S/Nが驚くほど高く、消えゆく音の変化が最後まで聞き取れる。ピアノの最後の一音が沈み込み感動が消え去る前に、ボーカルがそれを掬い上げる。何という絶妙なコンビネーション、何という大人の雰囲気。

EA-2000+PP-500の醸し出す官能的なイメージも素晴らしかったが、AIRBOW Chnook UL+朱雀の醸し出す、落ち着いた大人のイメージも素晴らしさに引けを取らない。

とても対照的な音だが、普段聞いているイメージには後者がより近い。CDで聞くこの曲のイメージにも後者がより近い。

色付けが少ないのが特徴のPhasemation同士を組み合わせたときに、最も色っぽい音が出たのは意外だった。それとも、一番最初に聞いたから、より感動が強く官能的に聞こえたのだろうか?

今まで聞いた4通りの音はそれぞれに良さがあり、どれが一番とは決め難い。

けれど、好きだったのは「EA-2000+PP-500」で、あまり好きでなかったのは「EA-2000+朱雀」だろうか。  

 Beethoven Violin Concerto 

圧倒的なエネルギー感と音場の濃さ。音質やバランスには全く問題がない。

このレコードを生かすか殺すかは、組み合わせるアンプとスピーカー、そして総合的なセッティングがポイントになる。

EA-2000+PP-500の音には、独特な透明感と響きがあった。もしかすると、情報量の多さと、S/Nの良さに徹底的に拘ったからこそ、あの「濃密で官能的な味わい」が引き出せたのかもしれない。

今聞いている音も、それに匹敵すると思う。けれど、僅かに「座席の位置」が悪くなったようにも感じるし、レコードの質が若干落ちたようにも感じられる。やはり300万円という価格で、EA-2000に投入された技術は半端ではなかったようだ。

ちょっと悔しい思いもあるが、「価格なり」という意味で安心できた。

EA-2000+PP-500にはかなわないといえ、リクライニングを深くしてを目を閉じれば、コンサート会場のど真ん中で名演奏を聴いている自分を感じる。納得&満足できる音だ  

 Night Birds

Eroica GXに比べると朱雀は、音が細やかだが「響き」は少ない。

発電部分までのカンチレバーの長さの違いが、その音に現れているのだろう。その味わいは従来のアナログとは違うが、色付けの少なさ情報量の多さでは、従来型のカートリッジとは一線を隠している。

「デッカ」、「IKADA」という「カンチレバーを持たない」カートリッジがある。あるいは「レーザープレーヤー」という振動系から切り離されたレコードプレーヤーもある。メーカーはそれを「究極のHiFiレコードシステム」で進歩したアナログだという。

私の意見はまったく違う。レコードの「マスタリング」は、標準的なカンチレバーの「響き」を考慮して行われる。響きを持たないシステムでそれを再生すると「響き」が不足して、レコードらしい、アナログらしい味わいが消えてしまう。つまり、良くない。

「朱雀」は、通常のカートリッジと比べ「響き」が少ないから、フォノイコライザーなどのシステムは「朱雀のストレートさ」を考えて構築すべきだ。

そう言う意味では、最先端のデジタルサウンド系のレコードや優秀録音盤に「朱雀」はよく合うだろう。逆に、ビンテージサウンドシステムや、品質が不十分なレコードにはには、マッチしにくいかもしれない。

アナログの音質には興味がつきない。デジタルでは決して味わえない「趣」を感じさせてくれる。

この試聴に使った昇圧トランス、AIRBOW BV-33は優れた製品だが、Phasemation T-2000に情報量では及ばない。だから、最後に昇圧トランスを「T-2000」に変えて、耳をリセットするために一日休ませて、翌日もう一度聞いてみることにした。

昇圧トランスをT-2000に変えてみたが、思った音にならなかったので、ヘッドシェルを変えることにした。

それまでEroica GXは「肉抜きされたサエクの軽量ヘッドシェル」に取り付けていた。

それを音質の良さに驚かされた、audio-technica「AT-LH15H」に変えてみた。

音の広がりが大きくなって、ボーカルと伴奏の分離感も大きく向上、ベースラインがしっかりした。

エネルギー感が向上し、ダイナミックな演奏になってる。色彩が濃くなって、伴奏それぞれの音がはっきりと聞き取れるのも良い。

まだ少し、HiFI傾向の音色は残っているが、聞き応えのある音、素晴らしい演奏を再現できているレベルに到達した。

試行錯誤を繰り返した後、ヘッドシェルを元に戻し、リード線を手持ちの銀コート銅線に変えたときが最も音が良くなったので、その状態で最後のレポートを書くことにした。

 とまどうペリカン

リード線のグレードアップが奏功し、やや多すぎると感じていた「濁り」が改善し、透明感が向上した。解像度も朱雀と遜色がなくなり、楽器の分離感なども良くなった。

井上陽水の声は少し荒くなったように思えるが、息遣いが聞こえるほど細かくなった。

リズムに溜めが生まれ、ダイナミックレンジが若干広がった。

リード線を変える前と比べると、解像度と透明感、密度感、エネルギー感は大きく向上した。

 Cold Cold Heart

リード線を変えただけで、ここまで!と言うくらい音質が向上していることがはっきりと聞き取れる。

ピアノの響きは重厚で、打鍵感はとても明快だ。

ウッドベースははっきりとしているし、ボーカルも力強い。

本当に、リード線だけでこれほどまでエネルギー感が向上するのかと信じられないくらい音が変わった。

楽器のアタック、音の出始めのエネルギー感がとても強く、音量は変えていないのに音が大きく感じる。

今のバランスが、CD/SACDで聞くこの曲に最も近く、その延長線上にある良い音だと実感できる。

余計なプラスアルファーは、ないけれど「録音が悪い」と諦めていたこのレコードがこれほど良い音で鳴ったことにとても驚いた。  

 My One end Only LOVE

ピアノの音の細やかさ、響きの良さがすごい。

リード線以外は何も変えていないのに、まるでカートリッジのグレードを2ランクくらいあげたくらい音が良くなっている。

伴奏とボーカルの分離は完璧。ピアノは透明で重厚、響きも美しい。

ボーカルは目の前で本人が歌っているように感じるほど、細やかでリアル。

HiFi的な素晴らしさも感じるが、同時に演奏の艶ぽさがグンと向上している。

バックでかすかになっている、金属が触れるようなノイズがはっきりと聞こえる。

今は昼間でリスニングルーム自体のS/Nが昨日より悪いから、昨日聞いたほどの感動はないが、音質は今回の最高レベルに迫っていることを感じる。  

 Beethoven Violin Concerto 

曲が始まった瞬間に、情報量が圧倒的に増えているのがわかる。音の広がりが大きくなったのはもちろん、楽器の配置が手に取るようにわかる。弦楽器、管楽器、打楽器、それぞれの音の違いがはっきりと再現され、楽器の数が一気に増えた。

たった、数千円にも満たない投資のリード線でこれほどまで音が変わるとは、私も経験したことがないくらいだ。自作リード線の端子には、AETから発売されているものを使ったが、それもよかったのだろう。

オイストラフのバイオリンは最高!弦が切れてしまいそうな高域から、オイルトラフの独特な甘さがある中低域との対比、伴奏からスッと抜けてくるその存在感の強さ。伴奏との対比も見事で、コンチェルトとして完成された演奏として味わえる。これほどまでのバイオリンの音が出るなら、是非ともバイオリンをソロで聴いてみたいと思う。

ホールの残響が全てはっきりと聞こえる。最高のS席でコンサートを聞いてるイメージそのものだ。

フォルトでほんの少しだけノイズっぽくなることがあるが、針圧やアームの高さなどの微調整で解決するだろう。

今までこのレコードを聞いた中での「最高のサウンド」の一つだと確信できる素晴らしい音だ。  

 Night Birds

リード線の変更で、高域の抜け感と、エネルギー感が一気に向上していることがよくわかる。

使っているプレーヤー「YAMAHA GT-5000」の高域の抜けと明瞭度が、今までこれほどに優れているとは思えなかった。100万円以内で購入できるレコードプレーヤーとしては、トップレベルの性能ではないだろうか?

ピアノの打鍵感はより鮮やかに、ベースのリズムもはっきりしている。コーラスも女性一人一人の声まで聞き分けられそう名ほどリアル。

ギターの存在感が強い。スタジオでの生演奏を聴いているかのように鮮烈で、そしてアナログらしい色彩の鮮やかさ!

今回、Phasemationのフラッグシップと聴き比べたことで、愛用するリファレンスシステムに「新たな目標」が見え、結果リード線の変更という僅かなグレードアップでリファレンスの音は、さらに50%くらい向上した。

前の音にも、前の音の良さはあったが、これほどまでに鮮烈でHiFiでストレートな音を聞かされてしまうと、やはり元には戻したくないと言うのが正直な思いだ。

普通のレコードが、優秀録音版に変貌したような、素晴らしい変化だった。    

2021年2月 逸品館代表 清原 裕介

 

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