ELAC BS243 limited CAV V70 Sonus Faber minima vintage auditor m 音質 評価 比較 試聴 テスト

逸品館お薦めの Sonus Faber Minima Vintage と、その兄貴分 Auditor M の音質比較に加え、サイズと限定モデルという

成り立ちが類似する、 Elac BS243 limited とリボン型ツィーターを使ったお買得スピーカー CAV V70の4機種を一同

に集めてテストをしました。

Minima Vintage (左側) ・ Auditor M (右側)

Minima Vintage

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Auditor M

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ツィーター

28mm(シルクドーム/磁性流体)

ウーファー

120mm(セルロース・アクリレート)

推奨アンプ出力

25-100W

インピーダンス

8(オーム)

感度(出力音圧レベル)

84dB/2.83V/1m

周波数帯域(−6dB)

55Hz-25KHz

クロスオーバー周波数

2KHz(-6dB/oct)

外形寸法(スパイク15mm含む)

W200×H330×D275mm

質量(逸品館にて計量)

6.9Kg(1本)

メーカー標準価格

¥450,000(ペア・税別)
生産終了

ツィーター

25mm(シルクリングラジエター)

ウーファー

150mm(ブラックウッド・ファイバー)

推奨アンプ出力

40-150W

インピーダンス

4(オーム)

感度(出力音圧レベル)

88dB/2.83V/1m

周波数帯域(−6dB)

50Hz-30KHz

クロスオーバー周波数

2.5KHz(-6dB/oct)

外形寸法(本体寸法)

W202×H353×D365mm

質量(逸品館にて計量)

9.2kg(1本)

メーカー標準価格

¥588,000(ペア・税別)
生産終了

Auditor M 、 Minima Vintage 音質比較

4種類のスピーカーを比較する前に、まずオリジナルMinimaとMinima Vintageの比較テストに用いたBladeliusのSynとTyrでMinima VintageとAuditor Mを聞き比べた。

Bladelius “Syn(シュン)” CD/SACDプレーヤー

Bladelius “Tyr(チュール)” プリメインアンプ

GETZ & GILBERTO / STAN GETZ , JOAO GILBERTO / SACD /UCGU-7006
スタン・ゲッツ & ジョアン・ジルベルト

Auditor M

Minima Vintageから切り替える。

低音の“量感”はそれほど変わらないが、しっかりした感じ耳に聞こえる“低音の力”は、明らかAuditor Mが強い。これは、純粋にウーファーとエンクロージャーサイズの違いによるものだろう。確実にワンクラス上の低音が出る。

中音は響きが適度で心地よいが、箱鳴きをうまく利用して独特の甘さを出すMinima Vintageの方がこの曲には、よりマッチする。

Minima Vintageでは、ボーカルが左右のスピーカーを結ぶ線上に定位し、楽器は奥に聞こえた。Auditor Mはボーカルの位置はそれほど変わらないが、楽器は前に出る。前後方向への「音の広がり」もやや浅くなる。間接音が少なくなり、直接音がハッキリと聞こえる印象だ。Auditor Mは、音源を「虫眼鏡」でやや拡大して「近く」で見ているような感じがする。音を聞きたいならこの方がよいかもしれないが、体を包み込む「心地よい感覚」をより強く感じさせるMinima Vintageの方が音楽を楽しませてくれる。

実は、今年訪れたSonus Faberの試聴室で最初に聞かせてもらったのが“このソフトと同じレコード”だった。星の数ほどのソフトから“私”と“彼ら”が選んだのが同じというのは出来すぎた偶然だ。それよりは、彼らがスピーカーを作るときにイメージしている曲が、私に伝わったと考える方がつじつまが合う。

しかし、残念ながらSonus Faber工場見学記でも触れたが、そこで聞いたElipsaの音はあまり好みではなかった。レコードを掛けたにもかかわらず残響が少なく、色気があまり感じられなかったからだ。少なくとも私は、ここ3号館で聞くSACDの方が、何倍も楽しく聞ける。上手くSonus Faberの“良さ”を引き出せているのではないだろうか。

PAGANINI Violin Concert No.1 / SPOHR Violin Concert No.8 / Hilary Hahn / 00289 477 6232
ヒラリー・ハーン & スエーデン 放送交響楽団 / 大植 英次 指揮

Auditor M

Sonus Faber社訪問の後、立ち寄ったミラノのレコードショップで買ったCDを演奏する。これで装置もソフトも、すべて"ヨーロッパ・メイド"になった。

冒頭部分の低音の量感にまず驚いた。とてもこんなに小さなスピーカーからでている音とは思えない豊かな量感と力強さだ。

マルチマイクで収録し、複雑な編集(ミキシング)が行われているグラムフォンの録音は、ホールのエコーが重なるために音場が前後に浅く、音の広がりに乏しいことが多いのだが、残念ながらAuditor Mでは、その傾向が緩和されない。バイオリンのソロはその美しさに聞き惚れるが、やはり「ステレオ」で音を聞いている感じが抜けない。一つ一つの音は素晴らしいのだが、混ざり足りない「味」のように、各々が個性をやや主張しすぎる感じがある。コンサートホールの座席位置なら、かなり前方で聞いている感じか?あるいは、ベランダ席で聞いているような感覚だ。PMCなどのモニター系のスピーカーでもその傾向は強いから、Auditor Mが特別におかしいわけではない。ソフトの持ち味をストレートに出しているだけに過ぎないのだ。

Auditor Mは音も悪くないし、Sonus Ffaber特有の甘さや艶もある。しかし、このソフトでも、Minima Vintageの方が音楽を音楽らしくリラックスして聞けるように思えた。

Minima Vintage

確認のためスピーカーをMinima Vintageに変えてみる。

導入部の低音の量感や力感は小さくなるが、なぜか「低音感」はよりはっきりと感じられる。

一つずつの音はAuditor Mの方が緻密ではっきりとしていたが、音楽全体の表現力には少なくない差が感じられる。Minima Vintageのバイオリンの音は、さらにデリケートでより美しい。Auditor Mでは、平面的に過ぎなかったメロディーでも、Minima Vintageで聞くとドラマティックに躍動する。曲が進むに従って、どんどん音楽に聞き惚れてゆく。これが、万人の愛するMinimaの“味”なのだろう。

Auditor MとMinima Vintageの比較評価

小型スピーカーの枠の中で「いい音」を出そうとしたのがAuditor Mなら、同じ枠の中でよりよく「音楽を心地よく聴かせよう」としたのがMinima Vintageなのだということが、2機種を比べることではっきりと感じ取れる。

Auditor Mは、ハッキリクッキリとすべての音を精密に表現する。同じソフトをMinima Vintageで聞くと音のエッジは甘くなり、音の芯もややぼやけてしまうが、生々しさ、自然さ、心地よさでは、Auditor Mを上回る。

Minima Vintageでソフトを聞くと、心は「ステレオ」で音を聞いているという呪縛から解き放たれ、「コンサートを聴いている」感覚になれる。それがすごく自然に起きるのだ。

今、Minima Vintageが復刻された理由は、まさに“ここ”にある。

自分が聞きたいスピーカーを作った「Sonus Faberの創始者:フランコ・セルブリン氏」の心が聞き取れる。優しく愛情に満ちた“このスピーカー”こそ、人々が「それ」を必要としている今の時代にこそ復刻されるにふさわしい。

Auditor M 、 Minima Vintage 、 ELAC BS243LTD 、 CAV V−70 音質比較

今回の目的は、Auditor MとMinima Vintageとサイズがほぼ同じクラスのスピーカーを2種類加えて、合計4種類のスピーカーを比較することで、それぞれの音質を明確にすることである。

まずAuditor MとMinima Vintageを比べたが、この時に使ったBladeliusのSynとTyrでELAC BS243LTDやCAV V−70を鳴らすのは、贅沢すぎる組合せになる。

そこで一番安いスピーカーの“価格に合わせて”CDとアンプを選ぶことにした。選んだのは、Hi-end Show Tokyo 2008 Springでも好評だった、AIRBOW CC4001/SpecialとPM6001/Liveである。

AIRBOW CC4001/Special ¥105,000(税別)

AIRBOW PM6001/Live ¥88,000(税別)

次の2枚のソフトを比較試聴に使った。

PAGANINI Violin Concert No.1 / SPOHR Violin Concert No.8 / Hilary Hahn / 00289 477 6232
ヒラリー・ハーン & スエーデン 放送交響楽団 / 大植 英次 指揮

COME AWAY WITH ME / NORAH JONES / CD / 7243 5 32088 2 0
ノラ・ジョーンズ

Minima Vintage

◆ヒラリー・ハーン

CDプレーヤーとアンプを変え同一のソフトを聞き比べることで、BladeliusとAIRBOWの違いをまず確認する。

CDプレーヤーとアンプの変更で、導入部の低音の量感はほとんど変わらないが、低音を押し出す力が強くなる。曲調は力強く男性的になって、ちょっと湿って曇っているようだったホールの空気も澄み切って聞こえるようになる。Bladelius Syn+Tyrとはかなりの価格差があるが、音楽的な表現力はこのシステムも全然悪くない。それどころか、好みによっては「このさっぱりした音」の方を高く評価する人がいてもおかしくないと思う。

しかし、ティンパニーやシンバルの「芯」は、明らかに軽くなる。バイオリンの音も、深さや複雑さが減少する。価格ほどの差があるとはいえないが、音の「質感」ではやはりSyn+Tyrが一枚以上、上回る。音の細やかさもSyn+Tyrに分があるようだが、弱音部の「表現のデリケートさ」では、AIRBOWも負けてはいないし、弦や打楽器の切れ味やエネルギー感、音楽をぐいぐいとひっぱってゆくリズム感は、Syn+Tyrよりも一枚上手だ。曲調が歯切れよく小気味がいい。

全体的に音がややドライになって情緒があっさりするが、それはそれで悪くない、一つの見識だと思える。強いて言うなら「もうちょっとのプラスアルファー」がほしいと思うが、それをこの価格に求めるのが間違っているのだ。趣味の世界では「そのプラスアルファー」を実現するのにもっともコストがかかるのだから。

Minima Vintageの評価に移る。

Minima Vintageのレポートが他のスピーカーと違い、楽器の音を個別に評価する内容にならないのは、その「楽音の混ざり具合」が絶妙だからだ。音は細かいが、それを“音”に分解しない、ぎりぎりのバランスが素晴らしい。

バイオリンの音は、弓を押した時と弾いたときの違いがはっきりと再現され、ボーレイト(弓使い)が目に見えるほどのリニアリティーの高さが感じられる。その上で明るい音、少し愁いを帯びた音、バイオリンの“情緒の深さ”が饒舌なまで克明に表現されるのは、紛れもなくSonus faberの血統だ。

AIRBOW CC4001/Special と AIRBOW PM6001/Live の組合せで聞くMinima Vintageは、ややあっさりした印象はあるが、演奏自体は若々しくフレッシュで元気よく楽しめた。

◆ノラ・ジョーンズ
悪くない音だが、やはり少しあっさりとした印象だ。

色彩感や甘さは十分に感じられるのだが、粘り?厚みが少し物足りない。しかし、それはSyn+Tyrの組み合わせで芳醇な音を聞きすぎたせいかもしれない。

気持ちと耳をリセットして慎重に試聴を進めることにする。

低音のディティールはやや甘いが、ベースの音はこのサイズのスピーカーとは思えないほど量感豊かにしっとり出てくる。ピアノもやや芯が甘いが、響きは美しい。ギターも弦をリリースした瞬間のアタックに甘さを感じるが、音色やタッチ自体は悪くない。

このソフトのボーカルはほとんどの場合、子音が強くなりすぎる傾向がある。だがこのシステムでは、子音と母音のバランスが絶妙で心地よく聞ける。エンクロージャーの美しい響きを生かした木質的な香りを感じる音。それがMinima Vintageの持ち味だ。

このシステムで聴くノラ・ジョーンズは、過度に色っぽくもなく等身大のイメージだった。

Auditor M

◆ヒラリー・ハーン

導入部の低音の量感は、Minima Vintageと比べものにならないくらい豊かで、なおかつその押し出しの強さに驚かされる。まるで中型のトールボーイ型スピーカーを聞いているようだ。しかし、低音のディティールの描き方はMinima Vintageの方が繊細でカッチリとしている印象がある。Auditor Mは、箱をより鳴かせて低音を増大させている感じが強い。そのためか、Minima Vintageではややあっさりと聞こえたこのソフトだが、Auditor Mでは演奏はリッチに聞こえた。

リングツィーターの特徴で楽器のアタック部分のエネルギー感が強く、音の芯がしっかりするので、楽音がはっきりと力強く聞こえる。バイオリンもタッチがほんの少しハードに感じられるが、決して強すぎることはなく、表情も豊かで情緒も深い。Minima Vintage同様に、やはりAuditor Mもバイオリンはすばらしい。

Minima Vintageが全体的な印象で音楽を聴かせるのに対し、Auditor Mは個々の音をよりはっきりとしっかり聞かせることによって、音楽を明快かつ繊細に表現するイメージだ。とはいえ、PMCのような直線一本槍の潔い音ではなく、Sonus faberの持ち味である「柔らかさ」「アコースティックな響きの良さ」は、Auditor Mにもしっかりと生かされている。

Auditor Mは、Minima Vintageを現代的に解釈しリファインした音と受け取れた。

◆ノラ・ジョーンズ
ウッド・ベースの音は、より深く沈み込む。低音のボディーも豊かだ。ピアノは、艶を増しブリリアントな音が出る。

ノラ・ジョーンズの声は張りがあって、違うミュージシャンのように深みを持ち、上質に聞こえる。この価格のCDプレーヤーとアンプで鳴らしているとは、到底思えない。信じられないほどクォリティーが高く納得できる音が出る。

このソフトで比較するとAuditor MとMinima Vintageとの「音の違い」は、かなり大きくAuditor Mの音が良いが、その理由の一つは、ソフトの録音が現代的で「音も良い」からだろう。AIRBOWとMinima Vintageの組み合わせでは、その「音の良さ」を引き出せなかったが、Auditor Mは“それ”を十分に引き出せたのだ。

組み合わせるシステムをより選ばず、標準的な「デジタルの音」を生かしてくれるのは、Auditor-Mの方だ。明るく、しなやかで、響きも美しいノラ・ジョーンズを聞くことができた。

◆Minima Vintage ・ Auditor M 総評

AIRBOW CC4001/Special+PM6001/Liveとのマッチングは、あきらかにMinima VintageよりもAuditor Mが優れていた。Bladelius Syn+Tyrの方が価格的には3倍近く高いのだが、それでもAuditor Mとの組み合わせでは、AIRBOWを推薦する。高いCDプレーヤーとプリメインアンプとの組合せが、常に良い結果をもたらすとは限らないという好例だ。だからこそオーディオは難しいし、だからこそオーディオは面白い。

Auditor Mは新設計のスピーカーらしく、組み合わせるシステムの音を素直に再現してくれる癖がないスピーカーだ。CDプレーヤーやアンプとのマッチングは難しくないし、アンプに負担を強いらずに軽やかに鳴る。

これに対しMinima Vintageを生かすか?殺すか?は、その“独特の持ち味”をどれくらい上手く引き出せるかにかかっている。世の中にある多くのシステムは、今回使っているAIRBOWの音に近いはずだから、もしMinima Vintageの音に不満を感じられたなら、CDプレーヤーとアンプ、特にアンプを見直すことで、良い結果が出せるのではないだろうか。

  

CAV V-70 (左側) ・ Elac BS243 Limited (右側)

CAV V-70 (生産完了)

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ELAC BS243 Limited (生産完了)

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ツィーター

リボン型

ウーファー

130mm

最大入力

100W

インピーダンス

6(オーム)

感度(出力音圧レベル)

85dB

周波数帯域(−6dB)

50Hz-50KHz

クロスオーバー周波数

4.5KHz

外形寸法(スパイク15mm含む)

W185×H330×D331mm

質量(逸品館にて計量)

6.4Kg(1本)

メーカー標準価格

¥63,000(ペア・税別)
生産完了しました

ツィーター

JET3(ハイルドライバー)

ウーファー

150mm(AS-XR コーン)

最大入力

80W

インピーダンス

4(オーム)

感度(出力音圧レベル)

87dB

周波数帯域(−6dB)

41Hz-50KHz

クロスオーバー周波数

2.7KHz

外形寸法(本体寸法)

W170×H285×D232mm

質量(逸品館にて計量)

5.2kg(1本)

逸品館販売価格

¥189,000(ペア・税込)

ELAC BS243 Limited

ヨーロッパで見学したブルメスター(ドイツ)のスピーカーのツィーターには、ELACの“JET3”が使われていた。同じドイツのメーカーという理由もあるのだろうが、音にこだわるブルメスターが選んだからには、音質的に優れているという理由も大きいはずだ。ブルメスターの説明によると、JET3が採用している「ハイルドライバー」は、音量を大きくした時のひずみが少なく音がヒステリックにうるさくならないという。原理から見ても、その説明は納得できるし、今までいろいろな種類のツィーターを聞いた私も、「ハイルドライバー」が理想のツィーターに近い方式の一つという考えには、まったく同感だ。

今回テストする“BS243 Limited”には、標準でいくつかの音質調整装置(付属品)が付いている。比較テストを行う前に今回の最適な組み合わせを探ってみよう。

同梱パーツ

左から、ジャンパー線、ゴム脚。

右上から、バスレフポートを塞ぐためのスポンジ、ツィーター周りに取り付ける反射防止用のスポンジと

取り付け金具。

●ネットのあるなし

多くのスピーカーには、埃などからユニットを保護する目的で「サランネット」が付属している。一部の例外としてSonus Faberの上級モデルのように音質を全く阻害しない方式(その代わりユニットも保護できない)やVienna Acousticsのようにサランネットで積極的に音質の改善に取り組むメーカーもあるが、ほとんどの場合「サランネット」をつけると細かい音が聞こえなくなったり、高域が濁ったりと良いことがない。

付属のサランネットの影響をElacでテストしてみたが、驚いたことにこのスピーカーは、サランネットによる音質の変化がほとんど感じられなかった。吟味されたサランネットが採用されているのか?あるいは、ハイルドライバーという方式がサランネットの影響を受けにくいためか?確認はしなかったが、私は多分サランネットが優秀なためと思っている。なぜなら、これほどまで細部にこだわった付属品を同梱しているスピーカーメーカーは、他に類がないから、きっとサランネットにもこだわったのだろうと考えるのだ。

しかし、サランネットの影響は、ほとんどないとはいえやはり高域の解像度や明瞭度は低下するので、今回の試聴は「ネットなし」で行うこととする。

●接続

Bi-Wireに対応しているスピーカーに一本のケーブルをつなぐ方法は、4通りあってそれぞれ音が違うのは、これまでにも説明してきた。今回も聞き比べを行い、最適な接続を探った。

プラスを高域、マイナスを低域につなぐタスキがけ(スタッガー接続)が音質バランスと音の自然な広がりに優れていたので、この方法を採用することにする。

●バスレフポートを塞ぐスポンジ

バスレフのポートの調整用に中央に穴の開いたスポンジが付属している。穴を閉じたスポンジでバスレフポートをふさぐと密閉型に近くなり、穴の開いたスピン時でポートをふさぐとカットオフ周波数が変化する。詳細はどうあれ、これを使うことで低音が変わる。どのように変わるのか?テストしてみた。

解放(塞がない)を基本とすると、バスレフポートの穴を完全にふさいだ場合、低音の量感が減るが中域の押し出しが強くなり、音がやや前に出てくる。

中央に穴が空いたスポンジをつけた場合は、低音の量感は少し減るが、開放的で引き締まった音に変わる。

完全にふさぐと閉鎖的な音がするので、あまりお薦めできないが、中央部に穴の開いたスポンジでふさぐのは、低音がふくらみすぎる場合には良好な解決法となるだろう。ボーカルを含めた中音の押し出しが強くなるので、音を前に出したい場合にも使えそうだ。

今回のテストは、もっともこのスピーカーの素性を自然に出している(あたりまえだが)と感じられる、スポンジなしで行うことにした。

●ツィーター周りの反射防止用スポンジ

BS243シリーズには金属ピンを使って取り付け、ツィーターの周りの反射を抑えるためのリング状のスポンジが付属している。

最近発売されたPMCのiシリーズもツィーター周りの反射をコントロールするための薄いパネルが取り付けられている。ツィーターの周囲の反射にメーカーが注目し始めたのだろうか?それは違う。LS3/5Aのような古いモデルを例に挙げるまでもなく、ツィーター周辺の反射を考慮したスピーカーは過去に多くの例がある。

AIRBOWからも、ツィーター周囲の反射をコントロールして音質を改善する目的を持つSweet-ringを発売しているように、ツィーター周辺の一時反射は高域の解像度や輪郭の強さ、見通しなどに大きく影響する。

BS243に付属するリング状のスポンジは、表面に植毛が行われている。より効果的に反射を低減するためだろう。このスポンジを装着することで高域は透明感を増し、音場の見通しがはっきりと向上する。しかし、その反面ハイルドライバーの持ち味であるエネルギー感が後退するように感じた。スポンジの取付を改善と考えるか?あるいは、改悪ととらえるか?ソフトやシステム、個人差によってその感じ方は分かれるはずだ。

今回はハイルドライバーらしさをより感じられる、スポンジなしでこのスピーカーを評価することにする。 

●ジャンパーケーブル

付属しているバンデン・フルの極太ジャンパー・ケーブルをジャンパープレートと交換して音質をチェックする。

中域が太くなるが、やはりハイルドライバーらしいパンチやエネルギー感、切れ味の良さが後退した。ジャンパープレートも交換しないことにする。

●付属品総評

BS243シリーズに付属している音質調整アイテムは、それぞれよく考えられたものであるが、このスピーカー本来の持ち味をより伸ばすためのものではなく、ハイルドライバーのエネルギーの強さをコントロールする目的(音のエッジを柔らかくする)で付属していると考えた方がいいと思う。少なくとも私は、それらを使わない「素」のBS243の音を好む。

もし、これらの付属品をメーカー自身が本当にすばらしいと迷わないなら「付属品」ではなく、標準品という形をとればよい。そうしないのは、彼らにも迷いがあるのではないだろうか?

◆ヒラリー・ハーン

小型スピーカーらしく、BS243 Limitedの定位感と立体感は抜群だ。ハイルドライバーは、見た目はリボン型と似ているが指向性は案外広く、特に左右への広がりに関してはドーム型と比べても大差がないから、設置もそれほど神経質にならなくて済む。

音質感はSonus Faberの2機種に比べるとさすがに少し落ちるように感じられる。しかし、AIRBOWとの相性は案外良く、質感の低下は“音楽を聴く”ためには気にならない。

見かけの“硬質感”とは裏腹にBS243 Limitedの音は柔らかい。もちろん、歯切れは抜群にいい。

低音は少し控えめだが、中高域とのバランスはうまくとれている。

エンクロージャーが少し低級な響きを出すのが気になるけれど、それに気付く人は多くないだろう。

バイオリンは弓がすれる音が少し強めに出るが、中音の軟らかさやデリケートな感じもうまく出てなかなか魅力的に鳴る。4〜8KHz付近のエネルギーが少し細い?感じがするけれど、それもわかる人は少ないはずだから、問題にはならないだろう。

音量を下げてみるが、ほとんどバランスが崩れず、音も細くならないのは、小さな音で音楽を聴かなければならない方にとって嬉しいことだと思う。

逆に音量を上げると、高域のやはり4〜8KHz付近に何らかのピークがあって、バイオリンが少しヒステリックに聞こえるようになる。音量をさほど上げなければ問題とならないが、音量を上げると低域も緩くなり音のタイミングも微妙に狂い、うるさい感じが強くなる。これは、アンプとの相性の問題かも知れない。どうやらこのスピーカーは、大音量に向いていないか?あるいは、もっとグレードの高いアンプを使わなければ、良い大音量が出せないようだ。

◆ノラ・ジョーンズ
ボーカルは、表情が豊かで心地がよい。

ピアノも響きが美しく、色っぽい。

ベースの量感も不足はないが、質感が伴わない。低音が弱く、質感が軽いからハイルドライバーの持つエネルギー感や色彩感、解像度感とうまくマッチしない。全体的な音のバランスは悪くないだけに、このウーファーの質感の低さが悔やまれる。ベースの押し出す力が弱く、どこかでエネルギーが抜けているようだ。エンクロージャーの剛性が足りないか、あるいは材質が悪いのだろう。この価格なら仕方がないが、それが惜しまれる。

その低音の質感不足を除けば、中高域の質感とエネルギー感、きめ細やかさ、色彩の豊かさは抜群だ。逆に、あまりにも中高域の音が良すぎるため、低域に不満が感じられるのかもしれない。

蛇足だが、ブルメスターではELACのハイルドライバー(同じものかどうかは不明)を搭載した自社製スピーカーに100万円〜1000万円!という高額なプライスをつけている。今年からドイツで販売される「ポルシェ」にブルメスターのスピーカーが搭載されるとも聞くが、そのツィーターもやはりJET3なのだろうか?とにかく、ブルメスターも認めるJET3の実力はたいしたものである。

BS243 Limitedに感じる低音の質感の物足りなさであるが、ブルメスターは多分それに気付いていて、それを問題と考えているのだろう。彼らのスピーカーのエンクロージャー(箱)は例外なく、強度の非常に高い無垢材や集成材で作られている。工場見学でMr.ブルメスターは、ブルメスターのスピーカーには“低級な音がするMDFは絶対に使わない”と断言していた。

ブルメスターが作ったスピーカーを彼らの試聴室でたっぷり聞いたが、BS243 Limitedで感じた“低音の質感不足”の不満はみじんも感じられなかったから、彼らの主張は間違っていないはずだ。

とにかく、このスピーカーをうまく鳴らすには、いいスピーカースタンドを併用するか、もしくは低域に強いアンプを組み合わせて低域の質感を少しでも上げることである。そうすればBS243 Limitedは、その価格が信じられないほど良い音で鳴ってくれるだろう。

CAV V−70

最後に価格が最も安く、ELACの1/4近い低価格で購入できるCAV V-70を聞く。多分、このスピーカーは本格的なリボンツィーターを搭載した製品としては、もっとも低価格なスピーカーのはずだ。

仕上げは、綺麗だがデザインは、ややあか抜けない。明らかに中国のデザインだ。美しい3種類のスピーカーを見た後では、やはりどうしても安っぽい感じがぬぐえないのは仕方ないだろう。この製品もBi-Wireに対応しているので音の良い接続を確認してからテストを開始する。音の良い接続は、ELAC BS243 Limitedと同じ高域にプラス、低域にマイナスを繋ぐたすき掛け接続だった。

◆ヒラリー・ハーン

リボン型のツィターを搭載しているが指向性はそれほど強くない。精密なセッティングを行わなくてもBS243 Limited同様、普通に鳴る。

エンクロージャーはそれほど分厚くないが、堅い材質を使っているようで引き締まった力のある低音が出る。少なくとも低音に関してはBS243 Limitedよりも好印象だ。

リボンツィーターはウーファーとの音の繋がりも良く、非常にバランス良く音楽を鳴らす。過去にテストしたCAVのスピーカーが、高域に輝くような癖が感じられたのとは対照的にリボン型なのに癖がない。この音のバランスはすばらしい。

帯域エネルギーバランスだけではなく、質感のバランスもうまくとれているから、ほとんど違和感を感じることなく音楽を聴ける。外観の素っ気なさ、田舎臭さからは、想像できないほど洗練された音が出るのが不思議だ。

バイオリンも鋭い音と柔らかい音のバランスがうまくとれていて、聞きやすく情緒的だ。コンサートマスターとバックの楽器とのバランス感覚も見事。もちろん、中高域の質感や解像度はBS243 Limitedの方が上手なのだが、全帯域のバランスが良いV−70の方が、素直に音楽に入って行ける。

弦楽器の厚みや太さもうまく出て、全く不満を感じることなく積極的に音楽を楽しめる。同じリボン型ツィーターを搭載するPIEGAには独特の癖を感じるが、V-70にはそれがない。このクラスのドーム型にはない、リボン型ならではの優れた中高域の再現性を持つ隠れた名品だと思う。ただし、このスピーカーも大音量にすると高域がややきつくなるから、大音量派の方は、アンプとのマッチングなどに注意してほしい。

◆ノラ・ジョーンズ
ウッドベースの質感、特に胴鳴りの部分の厚みとタメがうまく出るから、サイズの割に低域に不足感を感じることがない。

ピアノの打弦感やタッチの強弱の再現性も抜群だ。

しかし、中高域の質感の高さという部分では、さすがに前の3機種には及ばない。音を少し安っぽく感じることがあるが 、価格を考えればそれは納得せざるを得ないだろう。このあたりに価格の差を感じるが、それでもそのフルレンジスピーカーのようなバランスの良さと、リボン型ならではの心地よい解像度の高さは魅力的だ。他の3機種のようにどの分が優れているという突出したところはないが、音楽を聴いているときの安心感は際だっている。

メリハリは適度で心地よく、響きも適度、音色も際だって優れているわけではないが、すべての質感やバランスが整っていて、さっぱりと癖がなく音楽を再現する。全く違うスピーカーなのだが、V-70を聞いているとなぜかYAMAHAの名器と謳われたNS-10Mを思い出した。どちらも、不思議な魅力のあるスピーカーである。

総合評価

今回テストした製品にはそれぞれ独自の持ち味を感じた。

Minima Vintageには、中域の響きの甘さと美しさ。このスピーカーでは、レコードを聴きたい気になる。組み合わせるシステムは「アナログ的な音」のするものを選ぶと良いだろう。

Auditor-Mは、現代的に洗練されたモダンアートのような美を感じる。組み合わせるシステムを選ばずに「いい音」で音楽を聴かせてくれるだろう。

BS243 Limitedの驚くほど質感の高い中高域に触れてしまうと“その音の虜”になれる。直後にどんなスピーカーを聞いても物足りなくなるかもしれない。仕上げも美しい。しかし、音楽的なバランスには問題があるから、上手く鳴らすのが少し難しいかもしれない。仕上げは抜群に美しく、その音の癖も含めて「所有する喜び」が非常に高い製品だ。どちらかといえばマニア向きの製品だと思う。

V-70は不思議な製品だ。外観は、洗練とはかけ離れた只の箱。ウーファーのフレームも薄い鉄板。こんな構成のスピーカーにリボン型ツィーターを搭載したら、さぞかしバランスが崩れて頭でっかちになってしまいそうだが、そんな期待?は、見事に裏切られる。驚くべきバランスの良さ、癖のなさで欠点を露呈しない。リボン型ツィーターの常でやや色気の薄いさっぱりとした音だが、解像度は価格を遙かに超えるほど高い。ネームバリューと外観に目をつぶることができれば、結構長くつきあえるベストパートナーになりそうな予感を感じる。

価格と音質は比例しないと常に主張する私だが、今回テストしたスピーカーは価格と音質がかなりきちんと比例しているように感じた。もちろん、コストパフォーマンスという意味ではV-70が最も優れているのは、疑いようがない。しかし、オーディオという趣味はそういう「コストパフォーマンス」とは、かけ離れた対局の位置にある。それを考慮すると、価格と魅力は比例していると感じたのだ。

今回私が“気に入った”と感じたモデルは、その独特の魅力と“癒し系の音”を高く評価するMinima Vintageと“素の良さ”を味わえる、素うどんのようなV-70の2機種であることを付け加えて、このテストを締めくくる。

2008年7月 逸品館 代表取締役 清原 裕介 

 

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