すでに一部の放送局などで定番機種となっているBrainstorm
DCD8ですが、民生用途としてご紹介するのはおそらく逸品館が初めてかも知れません。DCD-8は高精度のクロックジェネレーターとリクロック(ジッターキャンセラー)機能を持っています。使いこなせば価格を超える大きな能力を発揮しますが、十分な使いこなしにはクロックに対する深い知識と経験が必要です。
それでは、その使用方法を簡単にご説明させていただきましょう。
今回は、iPodからのデジタル入力端子を備えるヘッドホンアンプ
Audio Technica AT-HA35iとデジタル入力を備えるDAC内蔵プリメインアンプ
HEGEL H70 を使用して iPod Dockから出力されるデジタルシグナルのリクロック(ジッターの低減)に挑戦してみたいと思います。
接続方法
(1)Audio
Technica AT-H35iにi-Podを装着します。
(2)AT-H35iでi-Podのデジタル信号をS/PDIF同軸デジタル信号に変換します。
※PCからUSBで出力する場合には、こちらをご参照下さいませ。
(3)AT-H35iからのS/PDIF同軸デジタル信号をDCD8に入力します。
(4)DCD8でリクロックされたデジタル信号を同軸デジタルケーブルでHegel
H70に接続します。
(5)HEGEL
H70をデジタルINに設定します。
接続完了(イメージ図)
DCD8の設定方法
デジタルINをデジタルOUTへルーティングする設定を行います。
・MENU
06番より、S/PDIF(L/R→o/e)を選択
・MENU
05番より、AESをAに設定
ドメインAのクロックリファレンスをS/PDIFに設定します。
・MENU
02番より、クロックリファレンスをS/PDIFを選択。rateをLearnに設定。
ドメインAのクロックをAutoに設定します。
・MENU
01番より、クロック Autoを選択。
インプットステータスを確認します。
・MENU41番より、デジタル信号が無事受信出来ているかを確認して下さい。
ドメインAのクロックリファレンスをSETに変えます。
・デジタル信号が問題なくロックしたら、MENU
02番より、サンプリングレートを固定します。
こうすることで、クロックの精度を固定できます。
音質評価
i-Podとの組合せ
この設定でi-Podの出力のジッターを除去できます。ジッターが除去されたiPodのサウンドは、驚くほど深く立体的になります!
さらに MENU 01番より、RATE Aの設定をSETに変更し、サンプリングレートを44100Hzの倍数(4倍)である176400Hzに設定すれば、iPodの出力が4倍にアップサンプリングされDACに出力されます。ほとんどのDACで高域がさらにクリアになり、音の広がりも一段と大きくなることをご体験頂けると思います。
さらに外部クロック入力にルビジウムなどを発信源とする10MHzの高精度クロックを入力することでさらなる音質改善が実感できます。
PCとの組合せ
marantz恵比寿ショウルームのイベントで実験を行いました。PCからの出力をUSB経由(Ratoc
RAL-9624UT1でS/PDIF同軸に変換)とLAN経由でAV8003/Specialに入力した場合、圧倒的にLANの音質が優位でした。(テストページ1)・(テストページ2)・(イベントページ/動画と音声入り)
LANとUSBの音質を比較してLANの圧倒的優位を確認した後、USB出力デジタル信号のジッターをDCD-8を使って取り除くとどうでしょう!?USB出力の音質がLANを大きく越えてしまいます!!つまり、USB出力の音が悪いのは「データーが損なわれていたため」ではなく「ジッターが過大だったから」とこの実験で証明されたのです。わたしのUSBへの疑問、PCの音質がイマイチ良くない理由への疑問がこれで氷解しました。確認のためにDCD-8に搭載されるアナライザー機能を使ってUSB出力をRatoc
RAL9624UT1で変換したS/PDIFデジタル信号のジッターを観てみると!!!なぜ音が悪いのか一瞬で分かりました。ジッターの単位がPPMどころか%に置き換えられるほど盛大にジッターが発生していたからです。さらなる高音質を狙ってPC内部で88.1/96kHzにアップサンプリングしたデーターをUSB経由で入力しようとすると、あまりにジッターが大きすぎてDCD-8が誤動作し、DACからノイズが発生してしまいました。DCD-8のクロック追従方式をいくつか変えて試しましたが、結局44.1/48kHz以上の周波数をリクロックすることはできませんでした。通常のオーディオ製品とは比較にならない大きなジッターがPCからの出力には発生しています。このジッターを取り除かなければPCトランスポーターの音質は、ピュアオーディオのレベルに到達することはありません。
Esoteric
D-07との組合せ
EsotericのD-07には、デジタル入力をリクロックする機能が搭載されています。さらに外部クロック入力を持つなど、内部にBrainstorm
DCD-8を搭載している構成となっています。そこで入力されるデジタル信号をD-07の内部でリクロックした場合とDCD-8をつかって外部でリクロックしてから入力した場合のどちらの音が良いか?試してみました。
AIRBOW
UD8004/Specialをトランスポートに使い同軸デジタル入力をD-07に接続して、高音質クロックジェネレーターAntelope
Audio OCXの“ある”、“なし”による音質の変化を調べました。AIRBOW製品にOCXを繋いだときほど劇的な効果ほどではありませんが、OCXの追加により透明感、きめ細やかさ、立体感が大幅に向上し、D-07の外部クロック入力を使用した音質改善が確実であることが分かりました。
次にOCXを外しD-07にデジタル信号をダイレクトに入力する場合とDCD-8によりロクロックされた信号を入力する場合での音質差を確認しました。結果として「UD8004/Special→D-07+OCX」と「UD8004/Special
→DCD-8→D-07」の音質は、ほぼイコールでOCXとDCD-8の価格差、デジタルケーブルの追加分の費用を考えると、この場合はD-07にOCXを直接追加する方が得策だと思われました。
最後にD-07にDCD-8をクロックジェネレーターとして追加することによる音質改善効果をテストしましたが、OCXを追加した場合に比べ音がややあっさり(さっぱり)とした感じで、個人的にはOCXを追加した少し響きとコクのある音質が好みでした。また、中間に繋いだDCD-8にOCXを外部クロックジェネレーター(クロックソース)として追加した場合の音質をチェックしましたが、D-07にOCXをダイレクトに接続した場合の音質とほぼイコールとなり、D-07内部のリクロック回路の性能が十分なものであると確認できました。
D-07+OCXとD-07+DCD-8に違いがあるとすれば、Fire
Wireのリクロック機能のあるなしです。D-07に装備されているUSB入力に使われているリクロック回路は、外部クロック入力と切り離されておりOCXによる音質改善効果が期待できません。つまり、PCをトランスポーターとしてUSBでダイレクトにD-07に入力してもジッターキャンセル効果による音質改善効果はさほど大きくないのです。しかし、PCからFire
Wireでデジタル音声を出力できればDCD-8にダイレクトに入力してジッターキャンセル効果による絶大な音質改善効果の恩恵に与れます。PCからUSB出力する場合にもRatoc
RAL-9624UT1などで信号をS/PDIFに変換してからDCD-8を経由させることで、やはりジッターキャンセル効果による大きな音質改善効果が期待できます。
お薦めのDCD-8の使用法ですが、Esoteric製品のようなWord
Clock入力を備えないCDトランスポーターとDACの間や、i-PodやPC関連機器を音声データーの送り出し機(トランスポーター)としてお使いになる場合が最適です。
次に、デジタルINをデジタルOUTルーティングします。