スピーカーの寿命
一部のスピーカーに使われている、エッジのウレタンやゴムなどの高分子樹脂部品は劣化が激しく、JBLなどが好んで使う「灰色のウレタンエッジ」は加水分解により、直射日光などがあたる劣悪な環境では最短1年未満で、乾燥した室内などの最も恵まれた環境でも最長10年程度で、風化してぼろぼろになります。
エッジの寿命を延ばすため、ウレタンエッジを「鹿皮」などに張り替えサービスがありますが、「張り替え後の音質がオリジナルと大きく変わってしまう」ので逸品館ではお薦めしていません。
欧州系のスピーカーよく使う、「黒いゴムエッジ」も、3年くらいで劣化が始まります。5年〜10年程度経過したユニットを取り替えると音質は見違えるように良くなることが多いようですが、ぼろぼろになって破けるようなことがなければ、そのままお使い頂けます。
ゴムの表面が硬くなっていたり、細かいひび割れがある場合には、エッジやユニットが交換時期に達していますので、ユニットの交換が必要です。
Tannoyの上級モデルに使われている「蛇腹状の布エッジ(ハードエッジ)」の寿命は非常に長く、数十年使えるとTannoy社は説明しています。
オーディオ機器の寿命
高価なオーディオ機器を購入するとき、あるいは中古品を購入するときに気になるのが「寿命(耐用年数)」です。
ある程度の期間までは、鳴らし込めば鳴らし込むほど音は良くなりますが、ピークを過ぎれば、やはり「劣化」が避けられません。
オーディオ機器のパーツで最も早く劣化するのは、「電解コンデンサー」です。電解コンデンサーは、車や携帯電話のバッテリーと同じような仕組みで電気を蓄えたり放出したりを繰り返します。その回数が多くなれば、性能が低下し音が悪くなります。高性能なオーディオ専用電解コンデンサーでも、5000時間を経過すれば音質への悪影響が起きることが多いようです。
電解コンデンサーの劣化は「温度の高さ」が関係します。
筐体が熱くなるA級アンプなどで、電解コンデンサーの温度が50度を超えると劣化が3〜5倍の早さで進みます。
単純計算では、一日に平均2時間の使用で最短だと1000日、最長でも5000日程度で音質が劣化します。作動温度が高くなるアンプは、使わない時はこまめに電源を切って、寿命を延ばしましょう。
しかし、電源を入れた瞬間に大きな電流が回路に流れ寿命を縮めることがあるので、スイッチを頻繁に入り切りするのは止めましょう。特に古いオーディオ機器は、そのほとんどのパーツがいつ壊れてもおかしくない状態になっており、電源投入時のショックが故障の原因になりかねません。
古い機器の保護には、ゆっくりと電気が流れる「ゼロクロススイッチ機能」が搭載された電源トランスなどをお使いください。
アンティックオーディオ機器のほとんどは寿命が尽きている
私はアンティックオーディオ機器が、高額に取り引きされるのは、おかしなことだと考えています。
様々な理由により、オーディオ機器は20年〜30年程度で寿命が尽きます。
寿命が尽きていなかったとしても、年数を経た機械はそれなりに音質が劣化しています。
最も怖いのは「オリジナルではないパーツを使って修理されているケース」です。
一般ユーザーは「オリジナル状態」を知らないので、オリジナルだと疑うことなく高額な対価を支払って「アンティークオーディオ機器」を専門店で購入しています。
しかし、それらの製品が逸品館へ売却目的に持ち込まれた時、「内部を開けて確認すると、製造当時は生産されていなかったパーツで修理されていること」がほとんどなのです。
当時の状態のまま現存している機器などほとんどありませんし、また補修用パーツの保存期間にも限度があります。
別パーツへの交換でオリジナルとまったく別物の音質になっているにもかかわらず、オリジナルだというふれこみで売買されているケースが本当に多いので、十分注意して欲しいと思います。
最近では、中国などで作られた「精巧な偽物を使った修理品」も多く出回っています。くれぐれもご注意下さい。