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2014年5月に開催された「ミュンヘン ハイエンド オーディオショウ」、EARのブースで奇妙なスピーカーを見かけました。Rogers LS-5/9そっくりですが、銘板には「Graham Audio」と書かれています。そして、ツィーターの音量を切り替えるための端子は「ハンダ付け」で固定されています。
「???」こんなスピーカーあったっけ?
EARはなぜこんなレトロなスピーカーを試聴に使っているのだろう?
帰国後、ミュンヘンで見た謎のスピーカーのとこはすっかり忘れていたのですが、8月にYSTから届けられた資料を見て驚きました。その資料に載っていた写真こそがミュンヘンで見た謎のスピーカー、「Graham Audio LS-5/9」だったからです。
今回ご紹介するls-5/9は、LSと名付けられたイギリス国営放送局「BBC」が厳格な規格を定めた放送局仕様のモニタースピーカーです。当時、イギリスRogers社を中心とする複数のイギリス・スピーカーメーカーがBBC Monitor LS Series 生産を行ってましたが、このRogersが業績不振により売却されたことで、これらのBBCモニター・スピーカーの生産も徐々に完了しました。
ところが、このBBC/Monitorの愛好者/愛用者(スタジオ関係者含む)は非常に多く、近年彼らの声に応える形でこれらの「レプリカモデル(復刻版)」が複数生み出されています。逸品館では、YST扱いのRogers/BBCモニターの復刻版(レプリカ)として、当時の音質をほぼそのまま完璧に再現しながら、さらに現代のデジタル音源にも対応するように若干の改良が行われ、私には「オリジナル」を上回っていると感じられる、Stirling Broadcast 社製品の LS-3/5a V2 ・ LS-3/6をすでに取り扱っています。
今回ご紹介するLS-5/9はLS-3/5aやLS-5/6と並ぶ、Rogers製品の中で私が最もお気に入りのモデルの一つです。LS-3/5aは、あらゆる音楽を芸術性はそのままにサイズだけをコンパクトに聞かる、まるで「盆栽」のような美しく凝縮された音楽感を持ったのに対しLS-5/9は、LS-3/5aの精密で美しい世界観はそのままに、さらにリスナーに音楽が語りかけてくるような「暖かさ」と「濃さ」を与えられたスピーカーでした。当時、Rogers LS-5/9が聞かせてくれた「ボーカル」と「弦楽器(バイオリン、ビオラ、チェロ)」の甘さと暖かさは、今も脳裏にこびりついて離れません。
Graham Audio LS-5/9の概要
LS-5/9の特長はLS-3/5aをそのまま大型化したようなユニット構成にあります。ウーファには、艶・厚み・暖かさに優れる「Polypropylene」を振動板に採用する200mm口径のユニットが採用されています。LS-3/5aよりも大口径のウーファーとの繋がりを考え、中音の再現性に優れる35mmの大口径ツィーターが採用されていますが、このためLS-5/9の再生周波数特性は「50Hz〜16kHz/±3dB」と現代スピーカーとしてはあり得ないほど高域の再生周波数帯域が狭くなっています。しかし、これは当時のLS-5/9のスペックとまったく同じです。
入力は、バイワイヤーに対応するLS-3/5aとは違って、シングルワイヤリングです。サランネットは、はめ込まれているだけなので簡単に外れます。
試聴に使った機材
Integrated AMP PM11S3 Ultimate |
Network Player NA8005 Studio |
Audio PC HTPC Player Windows 8.1 |
音質テストの概要
今回の試聴は、Northstar Design Intenso、AIRBOW NA8005 Studio、iCAT Ink. HTPCの音質比較に続けて行いました。プレーヤーとアンプはそのまま使い、ネットワークプレーヤー AIRBOW NA8005 StudioとiCAT Ink. HTPCの接続は、audioquest RJ-45Gを使ったDLNA/ネットワーク接続を使いました。
+ ネットワーク(Ethernet)接続 (HTPC搭載のJ Reverから再生)
楽曲は、CDをWAVファイルでリップしたデーターを使いました。
Original Sound Track / "TITANIC" から Never an Absolution
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Focal 1028BE | |||||||||||||||||||||||
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音質評価
イギリスに本拠を構えるGraham Audio が復刻したLS-5/9は、果たして本来の味わいを現代に蘇られてくれるのでしょうか?まず、今回の比較対象として選んだ「Focal 1028BE」から聞き始めました。
Original Sound Track / "TITANIC" から Never an Absolution
静寂の中からバグパイプの音が天に向かって立ち上ります。続いてド〜ンという低い音が後方下に広がり、ボーカルが祈りを捧げる雰囲気で中央にビシッと定位します。
タイタニックのサウンドトラックは、正確無比なPMCをモニタースピーカーとして作られました。聞いているスピーカーはFocalですが、まるでPMCで聞いているような精緻な音です。
冷たすぎることはなく、明るすぎることもなく、癖のないニュートラルなサウンドで1028beが鳴りました。
この曲は昨日同じ条件で聞き、リポートを書きました。一夜開けても印象はほとんど同じです。
本来Focalはもう少し情感がある熱い音を出しますが、今回ソースに浸かっているPC/ネットワーク・プレーヤーはCDと違ってよけいな響き(歪み)を発生しないため、音楽の表情や雰囲気を「盛る」要素が少なくなります。USB接続ではNA8005 StudioはCDプレーヤーとほとんど変わらない滑らかで暖かく、ヒューマニズムに溢れる音を出しますが、接続をネットワークに変えるとモニター的で精緻な音になります。聞こえてくる音は驚くほど細かく、S/N感も高く、低音も非常に良く出ますが、少しクールな印象です。
1028beがこういう情感をやや抑えたクールな音で鳴ることを始めて知りました。
2曲を聞いた後アンプのボリュームを変えずにこの曲を再生すると、かなり音が大きく聞こえます。
一般的にクラシックの演奏はPopsなどと比べて「ダイナミックレンジ(最大音量と最小音量の差)」が大きく、最大音量を基準に録音レベルを設定すると最小音量はスピーカーに耳を近づけないと聞こえないほど小さく、「普通」に録音するとPopsと比べて平均音量レベルが小さくなります。だから、このソフトのように音が大きくなるのは不自然です。
ではなぜこのソフトの音量が「大きい」のか説明しましょう。私達がもっぱらオーディオで音楽を聞く環境は、コンサートホールほど静かではありません。そのため交響曲を普通に録音すると、「弱音部」の音が小さすぎて聞こえなくなってしまいます。この問題を避けるため、レコーディングエンジニアはマスタリング時に「コンプレッサー」という機械を使って、大きな音がある程度以上大きくならないようにリミッターを入れ、小さい音が持ち上げる(大きく)なるように音量を調整します。このヒラリー・ハーンのバッハコンチェルトは、コンプレッサーが必要以上に使われているため、再生音量が大きいのです。
オーディオマニアは「圧縮音源(MP3など)」を嫌います。しかし、このヒラリーハーンのソフトのようにSACDであってもマスタリング時にコンプレッサーをかけ過ぎれば、音源圧縮と同じ原理で音質が劣化します。結果としてSACDでありながら、その音質は「圧縮音源」とさほど変わらなくなります。録音とマスタリングは、一般家庭での再生環境を十分に考慮して行わなければなりません。しかし、残念ながら最近のグラムフォンだけではなく、数々の賞を取っている著名なレコーディングエンジニア(サラウンドに取り組む沢口工房など)でも、こういった基本的な問題を認識していないエンジニアが多く、優秀録音と言われながら実際には聞くに堪えないソフトが多いことです。またハードウェアでは、富士通テンが発売する「イクリプス」は開発エンジニアが「録音の悪いソフトで我が社のスピーカーは良い音が出ない」と断言していますが、録音の良いソフトが非常に少ない環境でそのように作られたスピーカーでどのようなソフトを聞けば、音楽が楽しめるのでしょう。そういう私もAIRBOWの初期には、ソフトの善し悪しに大きく依存する音作りを行っていました。その結果出てくる音は聞くに耐えないほど硬く、潤いのないものになって音楽を楽しむ事ができなくなったのです。そういう経験から、今は「心地よく音楽を聴ける音質」を目指しています。オーディオ業界だけにかかわらず、日本の大企業で従事するエンジニアの多くが大きな勘違いをしています。技術を自慢するような開発ではなく、もっと広い視野を持って人に優しい技術を開発して欲しいと思います。
話を戻します。AIRBOWの「CDプレーヤー」でこの曲を聞くと1028beはコンプレッサーの影響をほとんど感じさせず、生演奏に近い音の広がりと演奏の陰影を描き出します。しかし、ネットワーク接続でNA8005 Studioを使うと、良い意味での音の甘さ(響き)が少なくなり、ソフトをヘッドホンで聞いているような比較的小さな空間に音が凝縮されるような印象を受けます。
タイタニックの試聴では、1028beがPMCのように「モニター的」に鳴ることを経験しました。このソフトでもそれは同じです。ストレートと言えばストレート。面白みがないと言えば、面白みがない。そういう真っ正直な音で1028beが鳴りました。
Graham Audio LS-5/9 | |||||||||||||||||||||||
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Original Sound Track / "TITANIC" から Never an Absolution
音が出た瞬間に、一般的な2Wayスピーカーと比べ高域特性が「劣る」事が聞き取れました。早速カタログで確認すると、再生周波数帯域は50-16kHzと明らかに狭めです。CDのスペックは20kHz、SACDやハイレゾ、DSDでは50kHzを超えますから、LS-5/9Aはそれを反映できるスペックを持ちあわせていません。しかし、聴感上で高域限界が少し狭いことは、逆に人間が最も敏感な「中域」に音楽表現を凝縮する効果があります。
※高域周波数特性が16kHzと記載されても、音量がフラットに出ないだけで、スピーカーはそれ以上の高域を再生します。
現代的高性能スピーカーの中では、「ラブリー」な音を出す部類に属する1028beですが、ネットワーク・プレーヤーとの接続では、少し無機的でクールな音になりました。LS-5/9Aはそのクールさを見事に消し去り、最上級のCDプレーヤーでこの音楽を聞いている雰囲気を醸し出します。
低域の再生周波数帯域の限界もそれほど伸びていませんが、圧倒的な中域の濃さがそれを補います。楽器や人間の声に「魂」が宿ったような鳴り方は、聞いている人間を音楽の世界に引き込みます。脳裏に映画のワンシーン、ワンシーンが走馬燈のように浮かんでは消えて行きます。音楽を上手く鳴らす能力としては、Stirling Broadcast LS-3/5aに似ているのですが、Graham Audio LS-5/9はそれよりもさらに「濃く」、音楽を圧倒的な表現力で再生します。
この音こそ、音楽を聞くための音。高性能と引き替えに現代のオーディオ機器が忘れがちな重要なエッセンスを持つLS-5/9は、音楽を聞く味わいをグッと凝縮した魅力的な音でタイタニックを鳴らしました。
NA8005 StudioをUSB接続で聞いた心地よさと、ネットワーク接続で聞いた精緻さが上手くミックスされています。
細かい音が聞こえますが、それが音楽鑑賞の邪魔になりません。ボーカルは抑揚が大きく、表情がきめ細やかです。スペック上の周波数帯域やダイナミックレンジは縮小しているのかも知れませんが、音楽表現のダイナミックレンジは非常に大きく、あらゆる音が表情豊かで魅力的です。
Rogersが作っていた当時のLS-5/9も、Graham AudioのLS-5/9と同じ「高域特性を犠牲にしても口径の大きなツィーター」を搭載していました。当時自作スピーカーを作ろうと考えていた私はそのツィーターが気に入ってメーカーを調べ、フランスの「Audax」製品だと突き止め、フランスからツィーターを取り寄せたことがあります。Graham Audio LS-5/9には、私が惚れ込んだ「Audax社の最新モデル」が搭載されています。
ツィーターというとどうしても「高域特性」ばかりに興味が集中しがちですが、音楽を聞くときに重要なのは、「ウーファーと繋がる、ツィーターが再生できる最も低い周波数」が遙かに重要です。20kHzを大きく超える周波数帯域までツィーターでフラットに再現しようとすると、振動板の口径を小さくしなければならなくなります。そうすると高音よりも人間が敏感な「中域」の音が薄く硬く、音色が単調になってしまうのです。これはマイクにも通じることで、周波数特性を欲張りすぎると、最も忠実に記録したい音楽の「表現力」が薄くなります。
こういう「重要なポイント」を分からず、ハイレゾやDSDに手を出すと「細かい音が聞こえても、逆に音楽の表情は乏しくなる」という致命的な問題が発生します。CDを超えるスペックを持つSACDやDVDオーディオが普及しなかったのは、いたずらに特性ばかりを追いかけたそれらの音が「人の心に響かなかった」からです。それを省みず、またしても一部のメーカーの残党がハイレゾを声高に歌い、マスコミが利益目当てに迎合することが残念です。それはともかく、Graham AudioのLS-5/9が搭載する口径が34mmにも達するAudaxのツィーターが発する「艶のある中域」のなんと魅力的なことでしょう。この中域の濃さこそ、スペック上の高域特性を16kHzと割り切った効果です。
Stirling Broadcast LS-3/5a同様、Graham Audio LS-5/9は見事にオリジナルを復元しただけではなく、さらにそれを現代的にリファインすることに成功しています。ペア65-70万円(税別)という価格は決して安くはありませんが、オークションなどでつまらない「ビンテッジ製品」に手を出すよりも、遙かに安全に当時の音を味わうことができます。
レコード時代、音楽が娯楽や趣味の花形であった当時の「ふくよかなサウンド」が現代に味わえるというのは、とても素晴らしいことだと思います。個人の思いから出発した会社だからこそ、こういう思い切ったこだわりを持つ商品が作れるのでしょう。こういう「わりきり」を持った製品は、大きなメーカーではなかなか作れません。1960-80年代のクラフトマンシップの素晴らしさと、深さを感じさせる音で海を見ていた午後が鳴りました。
LS-5/9は、ソースが例え最新デジタルサウンドであっても、レコードで私達(1960年前後生まれ)が感動した音そのもので「海を見ていた午後」を鳴らしました。
LS-5/9は他の2曲のようにバッハコンチェルトを上手く鳴らすかと思いましたが、想像は裏切られこのソフトとの相性はそれほど良くありませんでした。
バスレフポートから出る低音の収束が遅く、お酒の瓶を吹いたように低音が箱(キャビネット)の中で籠もります。その上ツィーターから出る高音は、ツィーターとバスレフポートの2カ所から出ているように聞こえます。
弦楽器の色彩感や柔らかさや雰囲気の良さにLS-5/9が他のスピーカーとは違うこが感じられ、耳障りな音も出ず音質は十分魅力的ですが、音楽の抑揚や空間の広がりなどが不自然に感じられます。
ただし、CDプレーヤーならこの曲が上手く鳴ることもあるので、今回はネットワーク接続で聞くNA8005 Studioのモニターライクな音質がLS-5/9とマッチしなかった影響も大きいと思います。
Graham
Audio LS-5/9 試聴後感想
Stirling Broadcast LS-3/5aを始めて聞いた時、身体が震えるほどの感動を覚えました。オーディオでの音楽再生に骨身を削り、心血を注いで作り上げられたサウンドと真の職人魂がその音に宿っていたからです。Graham
Audio LS-5/9を聞いて、その感動が蘇りました。
話を車の世界に変えます。イギリスで作り続けられている「モーガン/Morgan」というスポーツカーをご存じでしょうか?フレームこそ金属ですが、そのボディーは木とアルミで作られます。職人が心を込めて作り上げる大量生産できない、昔ながらの車がイギリスでは今も売られています(大人気です)。日本を含む多くの先進国で利益追求のため葬り去られることの多い歴史的な技術の継承が、イギリスでは個人レベルで連綿と行われています。Stirling Broadcast LS-3/5aしかり、Graham Audio LS-5/9しかり。
無闇に特性を追うことなく、昔ながらのこだわりの再現を目指しそれを実現しているLS-5/9は高額な最新スピーカーが忘れてきた「情熱」を聞かせてくれます。
Stirling Broadcast LS-3/5a、Graham Audio LS-5/9、そしてHarbeth(お薦めモデル)に宿るイギリス・クラフトマンシップの味わい。今年来訪したウィーンで感じたヨーロッパの古き良き伝統が宿るそのサウンドには、音楽とオーディオの本場ならではの深い味わいが感じられました。
ヨーロッパの歴史が育んだクラシックや、イギリスの代表的なPopシンガーBeatles。1960-1980年にクライマックスを迎えた音楽文化を是非このスピーカーで味わって欲しいと思います。日本ではNHKに相当する、イギリス国営放送局のBBCが認定というお墨付きを与えたGraham Audio LS-5/9は、Rogers LS-5/9の音と魂が現代に蘇ったように感じられる素晴らしいスピーカーでした。
Cabasse EOLE3 | |||||||||||||||||||||||
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Original Sound Track / "TITANIC" から Never an Absolution
前回聞いた球形スピーカー、「Cabasse IO2」の印象が芳しくなかったので、期待せずに音を出したのですが、EOLE3は予想を覆す良い音でタイタニックを鳴らしました。
サイズなりの低音量感の少なさはさすがに気になりますが、IO2のように中高音が出しゃばりすぎる事がなくEOLE3は滑らかで艶のある音です。2Wayらしいきめ細かく品のある高音と、小型スピーカーらしい自然な音の広がりが両立し、なかなか魅力的な音でタイタニックが鳴ります。
同サイズでコンセプトが似ているAnthony Galloとの比較では、2Wayの優位でEOLE3は遙かに音が細かく明瞭で、細かいニュアンスまできちんと再現されるように思います。
低音が痩せるのはサイズのせいで仕方がありませんが、声の質感と伴奏の高域のクォリティーは非常に高く、比較的高額な価格を納得させられます。
中音域もサイズの限界は感じられるものの、厚みと暖かさが感じられかなり良い印象です。価格の高い上級モデルIO2よりもEOLE3はバランスが良く、音楽が楽しめました。
この曲でも低音は明らかに不足しますが、驚いたことに音の広がりや立体感は先に聞いたLS-5/9や1028beよりも自然で好感が持てます。小型スピーカーの面の苦躍如です。
EOLE3のような小型密閉スピーカーの低音は比較的スパッと切れているはずなので、Audiopro B2.27MK2のようや良質なサブウーファーを組み合わせれば、トールボーイ型スピーカーに迫る音質が実現しそうです。
少なくとも今回の試聴でEOLE3は、1028be、LS-5/9よりも明らかに自然な表現力でこの曲を鳴らしました。
Cabasse EOLE3 試聴後感想
先日cabasse MINORCAとIO2を聞きました。
MINORCAはあまりにも正直すぎ、IO2はサイズの無理を押して特性を追いすぎたためか、バランスに優れるとは評価しにくい結果となりました。
そのため今回試聴したEOLE3にも、正直期待はしていませんでした。
その予想を裏切り、EOLE3はこれまで聞いたCabasse製品で最もバランスに優れた音質で音楽を再生します。中域にしっかりとした厚みがあり、高域は外観サイズを疑う程細やかで品位の高い音が出ました。さすがに中〜低域は、サイズの限界を感じさせるものの、フルレンジスピーカーでは出せない中高域の細やかさと艶やかさは、その低域の不利を考えても特筆に値すると思います。これで価格が4万円(ペア)なら申し分ないのですが、残念ながら価格は4万円(1台)と決して安いとは言えないプライスが下げられているのが残念です。
設置場所に限界があり、良質なサブウーファーを組み合わせられるなら、Cabasse EOLE3は間違いなくそれでしか実現しないであろう、高音質を味合わせてくれるでしょう。サブウーファーとの組合せで、さらなる発展が期待できるスピーカーです。
2014年8月 逸品館代表 清原裕介
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