ユニゾンリサーチ UNISON RESEARCH p70 p40 sinfonia シンフォニア 真空管式プリメインアンプ 音質 評価 比較 テスト 試聴

ユニゾンリサーチ  UNISON RESEARCH
P70 / P40 / Sinfonia 音質 評価 テストリポート

スタイリッシュなデザインとリモコンが付いた使い勝手の良さが好評の「イタリア、オーディオブランド、ユニゾンリサーチ」からガラスパネルを使ったお洒落な真空管プリメインアンプ“P70” “P40”が発売されました。
早速、逸品館お薦めのSinfonia(シンフォニア)と音質を比較してみました。

特徴及び機能(輸入代理店エレクトリホームページより抜粋)

Unison Research 社は初期において、いくつかのプッシュプルモデル(Triode20、Power35 及び初期のNimbly)をデザイン製造していました。しかし、純粋な音質面の追求がされたSymply Two シングルアンプの成功以来、ほとんどの製品はシングル設計で、大型のReference モデルの成功にもなりました。このシングル設計技術の蓄積は、Sacchetti 氏による新しいプッシュプル技術と結びつき新たなインテグレーテッドアンプを誕生させることができました。回路と共にデザインも一新されP40/P70は、その斬新なサウンドにふさわしい威厳を持った外観、ベネチアの「MURANO」ガラスをフロントパネルにあしらった芸術性が与えられています。

P40は、6 Ωの負荷に対し40W+40W 出力、ディテールの明解な再現、音の豊かさを持ち、シングルサーキットの透明感にハイパワーならではの重量感と深みを両立させています。最近の比較的能率の低いスピーカーのパフォーマンスにも最大の貢献をします。P40 の4 つのRCAライン入力には高品質部品の4 系統の入力セレクターが採用されています。ボリュームはリモコンで作動する4 セクションポテンショメーターが使われ、アンプの全操作は、リモコンで動作するマイクロプロセッサーによりコントロール可能です。 

P40 は、1 本の双三極管ECC83 及び1/2 本の双三極管ECC82 による入力ステージ、そして各チャンネルに対し2 本のEL34 を有するパワーステージから構成されます。重要な出力トランスは、Unison Research 社により特別にデザイン、製作され、フルパワーで30kHz 以上まで伸びた広帯域特性を保証します。P40 の開発ではプッシュプルパワーステージがどのように駆動電流を大幅に高くし、またシングルエンドパワーステージのそれと比べ、異なる形状をみせるか、詳細な分析のもとプッシュプル回路の再設計に全力を注ぎました。その結果、出力インピーダンスをできるだけ低く抑えることができ、厳しい動作条件のもとでの各ステージの適切な駆動、大きな信号のうねりに対応して十分に安定した動作を保証できました。

P40 の入力ステージは、クラッシックな位相反転、 直結P-K 分割、ゼロフィードバックの三極接続を採用、IM 歪みの少ない極めて自然なサウンドを得ています。パワーステージにおいてP40 では、入力信号もしくはパワーサプライの変化、過負荷条件、または経年によるチューブ特性の変化に関し、一定のバイアスレベルを確保する最新のセルフバイアス回路をデザインしました。例えアンプが最適な運転温度に達しておらずとも、オンに切り替えた直後に正しい極性に達します。本回路は、連続的にバイアス電流レベル及びプッシュプルパス内の電流を検証し、自動的に結果として生ずる必要な補正を行います。

パワーステージサプライは500V 用高容量Pi-LC フィルタを有し、 アンプステージサプライは450V 用RC フィルタを有します。真空管ヒーターパワーサプライは、安定化したDC 供給です。なおマイナス電圧はEL34 のバイアス回路に供給されます。

P70は、6 Ωの負荷に対し70W+70W 出力、ディテールの明解な再現、音の豊かさを持ち、シングルサーキットの透明感にハイパワーならではの重量感と深みを両立させています。最近の比較的能率の低いスピーカーのパフォーマンスにも最大の貢献をします。

P70 は、デュアルモノ構成で、左右ch. アンプステージ及びパワーサプライ回路は完全に独立しています。アンプ内のシグナルパスは、入力より出力まで完全バランスとなっています。 これは、出力端子における信号が、アンプグラウンドに対してバランスであることを意味しています。P70 の4 つのライン入力はリアパネルのディップスイッチによりバランスXLR もしくはアンバランスRCA での入力選択が可能です。 P40同様にアンプの全操作は、リモコンで作動するマイクロプロセッサーによりコントロール、安全で高い信頼性及び判り易いユーザーインターフェースを保証します。

P70 は、2 本の双三極管ECC83 及び1 本の双三極管ECC82 による入力ステージ、そして各チャンネルに対し2 本のKT88 を有するパワーステージから構成されます。重要な出力トランスは、Unison Research 社により特別にデザイン、製作され、フルパワーで30kHz 以上まで伸びた広帯域特性を保証します。

●回路デザイン

P70 の開発ではプッシュプルパワーステージがどのように駆動電流を大幅に高くし、またシングルエンドパワーステージのそれと比べ、異なる形状をみせるか、詳細な分析のもとプッシュプル回路の再設計に全力を注ぎました。その結果、出力インピーダンスをできるだけ低く抑えることができ、厳しい動作条件のもとでの各ステージの適切な駆動、大きな信号のうねりに対応して十分に安定した動作を保証できました。

プリアンプは、2 つの差動アンプペアから構成されます。 2 つの差動アンプステージはDC 結合で、必要とされるゲインへの到達を許します。 これらにはカソードフォロワーが続き、再度DC 結合し、これらは必要とされる低出力インピーダンスを保証します。全プリアンプステージ用のパワーサプライでの電圧は、非常に高く約600V です。

入力ステージは、ローカルフィードバックを有します。これはバイアスコンポーネント及び信号用の異なるフィードバックファクターを特徴としています。 2 つの異なる値は、バイアス及び信号の値に関し、正確性を保つよう設定されています。我々がデザインした回路は最大200Vpp まで信号を増幅します。反対に、信号に影響するフィードバックファクターは、可能な限り最低の値で維持され続けます。

パワーステージにおいてP70 では、入力信号もしくはパワーサプライの変化、過負荷条件、または経年によるチューブ特性の変化に関し、一定のバイアスレベルを確保する最新のセルフバイアス回路をデザインしました。例えアンプが最適な運転温度に達しておらずとも、オンに切り替えた直後に正しい極性に達します。本回路は、連続的にバイアス電流レベル及びプッシュプルパス内の電流を検証し、自動的に結果として生ずる必要な補正を行います。パワーサプライ部分もデュアルモノレイアウトで2 つの完全に独立した回路となります。パ

ワーステージサプライは650V 用高容量Pi-LC フィルタを有し、 アンプステージサプライは600V用RCフィルタを有します。真空管ヒーターパワーサプライは、安定化したDC供給です。

UNISON では内部に使用される抵抗やフィルタ キャパシタから、ピュア セラミック バルブ ベースや基板まで全てのコンポーネンツは厳選され、最高の信頼性、そして長時間の使用における音楽的なクオリティを確実に保ちます。PC ボードの外形寸法、配分及びレイアウトは正確に研究、最適化され、電気的障害やコンポーネンツの過熱を防いでいます。

フロントパネルの存在感あるコントロールノブは、切削加工ステンレス製、その重量バランスの良さにより、滑らかで高精度なコントロールを実現しています。P40/P70 はオーディオ的なデザインから脱却、全体に丸みのある「HiFi-Radio」の美しいフォルムを採用し、ハンドメイドの「MURANO」ガラスをフロントパネル上部に、フロント下部のパネルにはUNISON 伝統の黒塗装仕上木製パネルをあしらっています。

P40
メーカー標準価格 500,000円(税別)
生産完了
この製品のご注文はこちらからどうぞ

P70
メーカー標準価格 800,000円(税別)
生産完了
この製品のご注文はこちらからどうぞ

製品仕様

■形式:

 プッシュプル管球式インテグレーテッドアンプ

■出力:40W+40W RMS

■周波数特性:20- 30kHz (0.5dB 1W)

■入力感度:500mV

■入力インピーダンス:47k Ω

■ SN 比:83dBA

■ THD:0.2% (10W)

■ダンピングファクター:8

■使用真空管:

 EL34 × 4/ECC82(12AU7A) × 2 /ECC83(12AX7A) × 1

■出力ステージ:プッシュプル・ウルトラリニア

■オペレーションモード:クラスAB

■入力端子/ アンバランス:

 1CD RCA、1Tuner RCA、1Aux RCA、 1Tape RC

■ライン出力:1Tape RCA、1Sub RCA

■出力コネクター:6 Ω (4-8 Ω )

■フォノステージ用電源端子:Symply Phono 用1 系統

■消費電力:260W 最大

■外形寸法:W 420 ×D 400 ×H 205mm(含突起部)

■重量:25.0kg

■付属品:IR リモコン

■価格:500,000 円( 税別) 生産完了

製品仕様

■形式:

 オールバランスド・プッシュプル管球式インテグレーテッドアンプ

■最大出力:70W+70W RMS

■周波数特性:10- 40kHz (0.5dB 1W)

■入力感度:500mV

■入力インピーダンス:47k Ω

■ SN 比:83dBA

■ THD:0.3% (10W)

■ NF:12dB

■ダンピングファクター:8

■使用真空管:

 KT88 × 4/ECC82(12AU7A) × 2 /ECC83(12AX7A) × 4

■出力ステージ:プッシュプル・ウルトラリニア

■オペレーションモード:クラスAB

■入力端子:4 ラインRCA or XLR、1Tape RCA or XLR

■ライン出力:1Tape RCA or XLR

■出力コネクター:6 Ω (4-8 Ω)

■入力端子:バランスXLR or アンバランスRCA(スイッチ切替)

■フォノステージ用電源端子:Symply Phono 用1 系統

■消費電力:360W 最大

■外形寸法:W 460 ×D 460 ×H 205mm(含突起部)

■重量:35.0kg

■価格:800,000 円( 税別) 生産完了



Preludio
メーカー標準価格 420,000円(税別)
この製品のご注文はこちらからどうぞ

Sinfonia
メーカー標準価格 640,000円(税別)
この製品のご注文はこちらからどうぞ

Preludio と Sinfonia の音質比較はこちら ・ ハイブリッド・プリメインアンプ Unico P の音質評価はこちら

製品仕様

■構成: デュアルモノ構成、シングルエンドウルトラリニア
  純A クラス管球式プリメインアンプ

■入力インピーダンス: 47k Ω

■入力端子: CD,AV,Tuner,AUX/4 系統

■録音再生端子: in/out 各1 系統

■最大出力: 14W+14W

■出力インピーダンス: 6 Ω

■周波数特性: 20-30kHz

■使用真空管: KT88 × 2/ECC82(12AU7A) × 2

■全高調波歪率: 0.1% (出力電圧1V 時)

■消費電力: 150W 最大

■外形寸法: W 374 ×D 350 ×H 170mm (含突起部)

■重量: 17.0kg

■価格: 420,000 円( 税別)

製品仕様

■構成: デュアルモノ、シングルエンドパラレルウルトラリニア
  純A クラス管球式プリメインアンプ

■入力インピーダンス: 47k Ω

■入力端子: CD,AV,Tuner,AUX/4 系統

■録音再生端子: in/out 各1 系統

■最大出力: 27W+27W

■出力インピーダンス: 4 Ω ・8 Ω (バイワイヤリング対応)

■サブウーファー出力端子: 1 系統(アクティブ用)

■周波数特性: 20-30kHz

■ NF : 14dB

■使用真空管: KT88×4/ECC82(12AU7A)×2 /ECC83(12AX7A)×2

■全高調波歪率: 0.1% (出力電圧1V 時)

■消費電力: 500W 最大

■外形寸法: W 440 ×D 415 ×H 205mm (含突起部)

■重量: 25.0kg

■価格: 640,000 円( 税別)

(クリックで拡大)

付属リモコン (Sinfonia、Prelude、共通)

P70とP40には、木製とアルミから構成されるケースが採用された共通の美しいリモコンが付属しています。

このリモコンは音量調節とセレクターの切り替え(Preludeのぞく)機能に加え、UNISON RESEARCHのCDプレーヤーをコントロールできる機能が装備されています。
※リモコンの意匠は予告なく変更される場合があります。

P70(P40)の高級感溢れる外観

天板には「Unisonresearch」の文字を形取った空気抜き穴が設けられています。細かな部分まで拘りを感じます。

手作りで作られる「ムラーノ・グラス」の厚みとステンレスのボリュームの質感がよくわかるショットです。

カバーを被せると「黒」に見えますが、フロントパネルは、ダークティンテッド色で真空管の灯が透けて見えます。

ガラスに押された「UN」の刻印。一台一台、刻印の深さや位置が微妙に違っています。

音質

テストには、高級真空管式プリメインアンプにふさわしく、また私の大好きな組合せを選んだ。

CDプレーヤー

AIRBOW SA10/Ultimate

スピーカー

Vienna Acoustics T3G

ソフトには、まず真空管らしい音色のチェックにふさわしいと思われる「女性ジャズボーカル」から「Unforgettable / Natalie Cole(ELEKTRA 9 61049-2)」から7曲目の“SMILE”を選んでみた。
この曲は、ナタリー・コールの父親ナット・キング・コールが歌って大ヒットしたが、その他にもマイケル・ジャクソンや多くのミュージシャンが歌い継いでいるスタンダードなナンバーだ。しかし、この曲が喜劇王の「チャーリー、チャップリン」によって作曲されたことは意外に知られていないかも知れない。
※(Wikipediaより:チャップリンの作曲した楽曲としては、“スマイル”(Smile)(『モダン・タイムス』)や“テリーのテーマ”(『ライムライト』)が有名。プッチーニのアリアにも似た美しい“スマイル”は、最初歌詞が付けられていなかったが、1954年に歌詞が付けられ、ナット・キング・コールの歌により大ヒットし、その後もマイケル・ジャクソンやエルヴィス・コステロらによって断続的にカヴァーされた。1972年、20年ぶりにアメリカへ招かれ、アカデミー賞特別名誉賞(オスカー像)を得たときは、会場のゲスト全員でこの歌が歌われ、チャーリーの栄光と功績が讃えられた(それはニューヨークのリンカーン・センターで催され、授賞式に先立ち開かれた歓迎会で黒柳徹子が面会している)。また、『モダン・タイムス』の劇中においてチャップリンが歌ったデタラメ語による“ティティーナ”は、ロサンゼルスのラッパー、J-Fiveによってサンプリングされ、ラップでも歌われた。同曲はトヨタ・istのCMソングとなり、大きな話題を呼んだ。)

Sinfonia

音が大きく左右・上下に広がるが音の密度が希薄にならず、身体を濃密なサウンド・ステージが包み込む。

普通の部屋で聞いているにもかかわらず音が上の方にも伸びて、曲が天井の高いホールで演奏されているように開放的に展開する。空間の見通しも素晴らしい。

楽器と楽器の間に上手く隙間ができて、伴奏が奏でる美しい調べの中に得も言われぬ実在感を伴ってナタリーのヴォーカルが定位する様が見事で、思わず聞き惚れてしまう。

弦は滑るように滑らかだが、ほのかに刺激的なアクセントを持っている。

管楽器の音は、真空管らしい弾力感、肉感に富む厚みがある。

フルートの音は、カスタードクリームのように滑らかで甘い。

チャップリンの映画にふさわしいフルオーケストラの伴奏とナタリーの美しい声が混ざり合って、この空間に身を委ねていつまでも抱かれていたいような、そんな夢のような気持ちになれる。Sinfoniaの描く“Smile”は、優しくそして深い。

P70

音の質は高く細やかさも抜群で中高音の透明度はSinfoniaよりも明らかに優れているのだが、対照的に真空管らしいイメージが希薄に感じられる。

バイオリンの音はクール。伴奏も真空管らしいコクや厚みが感じられない。

どちらかと言えば真空管アンプと言うよりは、トランジスターアンプのような音に聞こえる。

P40

音は良いけど国産アンプのようにやや音楽の表情が平坦に感じられたP70と違って、P40の音質はより真空管らしい雰囲気を持っている。

真空管アンプらしい、ふわっと体を包み込むような音の広がり感と中央付近にしっかりと定位するボーカルのコントラストの鮮やかさ、演奏の弦の厚み感、それでいて厚ぼったくさせすぎない良好なバランス感覚。

中高域の音がやや薄く、金属的?に感じられる癖があるが、大きな問題にはならなさそうだ。

P70で感じられた押し出すような低音の塊感はなく、軽やかになっている感じで演奏のスケール感では、P40はP70に及ばないが、味わいという部分ではP40をより高く評価したい。

総合結果

三種類のアンプを聞き比べたが、私が欲する真空管アンプの音にはSinfoniaが圧倒的に近い。言い換えればSinfoniaで聞くこの曲のイメージこそ、私が求めている音“そのもの”なのかもしれない。マッチングは素晴らしい。

アコースティックな音源でその能力が発揮できなかったP70のために優れた物理特性が要求されるソフト「Fourplay / 7599-26656-2」から一曲目“Bali Run”を選んでみた。

P70

攻守交代、今度はP70から先に聞く。

高音の切れ味と伸びやかさは、真空管アンプとは思えない正確なタッチで克明に描かれる。個人的には、もう少し響きが付加された方が真空管らしくて好きだが、このスピード感、正確さは、ほとんどの真空管アンプには求められない種類のものだ。特にパーカッションの切れ味と圧力はすごい。

中域とそれに繋がる高域の低い部分のエネルギー感は、このアンプでしか出せない迫力が感じられる。

同様のスピード感、押し出し感、かたまり感は、トランジスターアンプの得意とする部分だが、どちらかと言えば音がやや硬く感じられ、また「平面」的になりやすい低音が、P70だと「曲面」で出てくるのが心地よい。

切れ味のある速い音とそこから少しだけ遅れる音の時間差が絶妙で、そこから醸し出される「溜」が「独特のパワー感」を演出する。良くできたトランジスター純A級のパワーアンプに似ているサウンドだが、温度感は無闇に高くなく、ニュートラルだ。

P70は真空管として驚くほどハイパワーだが、音量を上げるとその実力が遺憾なく発揮され、音がグイグイ前に出てくる。

Sinfonia

アンプをSinfiniaに切り替えた途端、楽器の音の色彩がカラフルになる。

P70よりも明らかに音のトーンが濃く、細部が繊細だ。

絶対的なパワー感や押し出し感はP70が明らかに勝るのだが、音楽としての魅力、求心力ではSinfoniaの魅力が大きい。端的に言って“美音”で心地よい音だ。

純粋な音のダイナミックレンジの大きさ、雄大さという点ではやはりP70がSinfoniaに勝るのだが、逆に表現の細やかさ、グラデーションの豊かさなど感性に訴える部分でP70に勝るSinfoniaの方が、フュージョンであったとしても聞いていて楽しく、引き込まれてゆく。

華やかで明るいサウンド。そして繊細。

中低音のパワーはダウンするが、中域の音色の多彩さがそれを補って余りある。

P40

P40で聞くこのソフトの印象はP70とはかなり違う。この曲はP70では大がかりなスペクタクルを観ているように展開するが、P40では小さなライブハウスでの演奏に感じられる。

中音は柔らかく優しいが、高音の切れ込みの鮮やかさや、パーカッションの弾けるようなエネルギー感は感じられない。ピアノの音も軽くなる。

音色はカラフルで中音の暖かさも充分なのだが、今一歩明瞭感、解像度感が物足りなく感じられる。生産完了になったSimplyシリーズの音質に似ていると思った。

総合結果

音色が豊富なSinfoniaなら、音が重なったときも細かい音が複雑に絡み合っているのが聞き取れるが、P70では音の構造があっさりと単純になってしまう。音楽の三要素“リズム”、“メロディー”ではP70が優れていても“ハーモニー”は、圧倒的にSinfoniaが良い。結果として、Sinfoniaの音楽表現力がP70を越えて感じられる。このあたりアコースティックな音が大好きな私としては、譲れない差に感じられる。少なくともT3Gとのマッチングなら、フュージョンを聴くとしても私は迷わずSinfoniaを選ぶ。

P40はまとまりはよいのだが、T3Gでこの曲を鳴らすには、P70やSinfoniaと比べて明らかに力不足を感じた。スピーカーを駆動しきれず低音が緩くなってしまい、そのため細部のディティールが甘くなってしまったからだ。曲によっては楽しく聞けたので、もう少し小型のスピーカーを選ぶと違う結果が得られるのではないだろうか。

最後に、さらに優れた物理特性が要求される“TITANIC”を聞いてみるが、再び攻守を入れ替えてSinfonia、P70の順序で聞く。オーディオの試聴であまり考慮されていないようだが、同じ曲を複数回聞いて音を比較するとき「後で聞く方がいい音で聞こえる」と私は感じている。科学的な根拠もある。最初に聞いた音が記憶され次に聞く音がその記憶によって補完(脳内でより完璧な状態に復元)されるからだ。そこで今回のように曲を変えるときに聞くアンプの順序を入れ替えることには、ある程度の意味があると考える。

Sinfonia

帯域の広いこのソフトを、SINFONIAはらくらくと鳴らす。素晴らしいワイドレンジ。

出だし部分のリード楽器の音の切れ込みと響き、色彩感のマッチングが素晴らしく、「上質な楽器を聞いている」という感覚が、沸々と湧き上がってくる。

打ち込みの音も電子的にならず、まるで生楽器のような柔らかさとまろやかさ色彩感たっぷりに再現されるのは、良くできた真空管アンプならではの持ち味だ。

P70と比較して圧倒的に違うのは、ステレオ(2ch)で聞いているにもかかわらず、サラウンドと聞き違えるほどの広大で濃密な音の広がりが得られることだ。

とてもこんなに小さいパワーの純A級アンプで鳴らしているとは思えないほどの、エネルギー感溢れる中身のギュッとつまった音が出てくる。演奏がドラマティックで、聞いていてとても楽しい。

P70

音がクリアでシャープになるが、身体を包み込むような空気感が薄くなる。

スピーカーから良い音が出ているのを感じながら演奏を聴く。それは、それで悪くないし、実際に出てくる音はずいぶんと立派なもので、少なくとも直前に聞いたほぼ同価格のPASSの新型プリメインアンプ INT−150よりもずっと音が良いと私は思ったのだ。しかし、それでも良くできたトランジスターアンプのようなその「整った」音をSinfoniaの「楽器的」な音の後に聞かされると、どうしても評価が辛くなる。なぜなら、音楽を聞こうとするときに私が付き合っていて楽しいのは、明らかに前者だからだ。

スピーカーによる揺り返し(逆起電力)の影響もほとんど受けず、一つ一つの音を恐ろしいほど正確に描き出すP70は、真空管アンプとしては信じられないほど素晴らしい物理特性を獲得していることは間違いがない。そしてその上で真空管らしいまろやかさもしっかり持っている。それは、決して悪くないプリメインアンプPASS INT−150との比較でもP70が遙かに暖かく、柔らかく、立体的な音が出て音楽を楽しく聞けることからも明らかだ。でもやっぱりSinfoniaが聞いてより楽しいという単純な事実は揺らがない。

兄弟対決だから、それぞれの良さを引き出して書いてあげたいと思うのは山々なのだが、私にとってSinfoniaの音があまりにもストレートに好みに合う。価格もSinfoniaが安い。

これでは、私の中では勝負にならない。

P40

やはり、低音の輪郭が甘い。また量感や力感もP70には及ばない。

しかし、中高音の色彩感、艶やかさ、柔らかさ、そういった感覚に訴える部分ではP40も悪くない。真空管らしい、暖かく表情の豊かな音を聞かせてくれる。

国産車で言うなら、全長3.5m程度のバランスの良い小型車のイメージだ。過不足なく音楽を楽しませてくれるが、過剰に思える部分はない。それがP70との絶対的な違いだ。

同じデザインで作られているP70とP40だが、使われている真空管が異なることからも感じられるように、その目差すところや音質は、ジャンルの異なる製品のように感じられる。

P40が大衆車なら、P70は日産GT−Rのような超高性能スポーツカーを連想させる。運転して気軽に楽しめるのは前者だが、その秘めた性能を常にユーザーに感じさせるのはP70だ。

総合評価

P70とSinfoniaの比較で面白いのは、それぞれの出力だ。同じKT88シングル・プッシュでありながら、P70の出力は70W(ch)でSinfoniaは、その僅か1/3の27W(ch)しかない所だ。そこから動作の原理(回路)が全く違うことが読み取れるが、実際に比較しても同じアンプとは思えないほど、それぞれの音質は全く異なっている。

P70は、間違いなく良くできた真空管アンプだ。KT88のシングル・プッシュとしては信じられないハイパワーを取り出し、レンジも広く、スピーカーの駆動力も抜群だが、繊細さや緻密さは全く犠牲にされていない。ムラーノ・グラスの美しいパネル、小洒落たカッティングが施された保護カバー、重量感のあるボディー、塊から削り出されたかのような圧倒的な重量感・存在感を放つデザイン、力が内面から溢れ出てくるP70は、従来の真空管アンプの枠にはまらないすごいアンプである。

今回組合せた、どちらかと言えば“美音系”のスピーカーT3Gではなく、P70はそれにふさわしい最新型のスピーカー、例えばPIONEER S1EXと組合せればすごい音が出るだろうと想像できる。そんなP70を車に例えるならNISSAN GT−Rだ。活躍するのは、最新設備の整ったサーキット。大音量で歪みのない音質で音楽を聞ける場所が与えられたときP70はすべての制約から解き放たれ、驚くべき能力を明らかにするだろう。

それに対し、Sinfoniaはユーノス・ロードスターのように「楽しさを極めた」モデルに相当するだろう。街乗りやワインディングなど道を選ばず乗り手をワクワク楽しくさせるあのロードスター(マツダ車)の「乗り味」と共通する感覚がSinfoniaの真骨頂だ。広がりのある空間に美しくハーモニーが展開するその音質、木をふんだんに使ったデザインは、「斬新」と表現できるP70に対し、良い意味で「古典的」という名がぴったりだと思う。

P40は、これらの二機種に比べると小粒な印象がぬぐえない。低音もほどほど、高音もほどほど、中音には真空管らしい柔らかさと艶やかさを感じる。その長所は、すべてが“ほどほど”にまとめられている「バランスの良さ」にある。それほど大型ではない、音色の良い小型〜中型スピーカーを組み合わせたときP40は、その真価を発揮する。オーディオのようでオーディオでない。ムラーノグラスがよく似合う、お洒落な“大人のコンポ”。そういう“小粋”な雰囲気を持っている。

細部の作り込みが甘いイメージがあったUnison Researchの真空管アンプだが、SinfoniaやP70/P40には、その悪しき伝統の面影はまったくない。そのデザイン、仕上がりの良さからは、日本国内での販売が絶好調なUnison Researchの勢いが伺える。

話は戻るがUnison Researchは、先に発売されたSinfoniaでオーソドックスな正統派の真空管アンプとして「特性」よりも「音色」を取ったようだ。音色の良さと引き替えに出力が27W(ch)と限られたものになってしまったが、それでもかなり大きな音が出せる。日本の平均的な家庭で、出力に困ることはまずないだろう。もし、P70の音に私好みの真空管らしい「味わい」がふんだんに振りかけられていたら、私の結果は間違いなく違ったものになったが、それはUnison Researchの意図するところではなさそうだ。

逆に、この“Sinfonia”という真空管アンプとしてオーソドックスに完成されたパッケージングがあってこそ、今回発売されたP70のような、思い切り斬新なアンプが生み出せたのだと思う。P40は、その中間にあって“バランス”を優先させた手堅い仕上がりを見せる。

Sinfoniaは、Unison Researchの真空管アンプに対する真っ直ぐな回答であろう。P70は、トランジスターアンプに匹敵する音を真空管で実現するために作られたのではないかと想像する。このように、SinfoniaとP70は同じメーカーが発売する真空管を使った全く異なるジャンルのアンプなのだ。

明確に個性が違うから、どれを選ぶか?どう聞くか?その選択は容易である。

色気ならSinfonia。音質ならP70。バランスならP40を選べばよい。

正しい選択を行った時、SinfoniaもP70もその価格を信じられないほど素晴らしい音と感動を、あなたのスピーカーから引き出してくれるだろう。

2008年8月 逸品館代表 清原 裕介

その他の UNISON RESEARCH 音質テスト

○ S6NEW 、 S9 、 Sinfonia(6550)

○ Performance(パフォーマンス) 、 S8 、 S6 音質比較テスト

○ P70 、P40 、sinfonia 音質比較テスト

○ UNICO 100 UNICO CDE 、 Bladelius Syn Tyr 、 AIRBOW PM/SA15S1 Master 音質比較テスト

○ UNICO SECONDO 2 (ユニコセコンド)  音質評価テスト

○ UNICO CDP (ユニコ CDP) 音質評価テスト 

○ P70 、 P40 、 Sinfonia(シンフォニア) 音質比較テスト

○ Sinfonia(シンフォニア) 、 Preludio(プレリュード) 音質比較テスト